巨人を退団したパウエルを巡ってオリックスとソフトバンクが鞘当てをしています。先に合意したオリックスはパウエルの署名入り契約書のファックスだけで、ソフトバンクは本契約を交わしています。ソフトバンクの方が有利なように見えますが、道義的なことを考えると、オリックスに分がありそうです。しかし、パウエルがどちらの球団に行くにしても、どちらの球団が法的に正しいとしても、いずれにしても、小さな問題のような気がします。
パウエルは実績はありますが、身体に不安があり、言い方は悪いですが、はっきり言って「過去の人」です。もちろん活躍するかもしれませんが、問題はこういう選手を血眼になって複数球団が醜い争いをしていることです。野球の要である投手がどの球団も足りないのは分かります。でも、どうして育てようという発想にはならないかということです。
一方、若手選手にも問題があります。投手の駒が足りない現状に対し、なぜにオレを使えというアピールや覇気、ハングリーさが出てこないのでしょうか。管理人のような凡人から見ると、高校で硬式野球の野球部員でも相当なレベルと思えますし、プロ球団に入団する選手は雲の上の存在で、がむしゃらに頑張ればいくらでも替わりは見つかりそうな気がします。しかし、豊田泰光さんなど解説者やコラムニストの話を仄聞するところでは、今の若手選手にはかつてのようなハングリーさは見られないようです。これは「今の若い者は…」などと言って済む話ではありません。豊かな世の中になって育った若者が、何の実績もないのに、そこそこの契約金と年棒をもらい、ハングリーになれという方が無理があります。一方で、野球への夢が諦めきれず、アルバイトをしながら独立リーグで野球をする若者がいます。要するに需給がマッチしていないのです。プロの世界は非常に限られた人しか入ることが出来ません。そのため、一度入ってしまうとそれで満足してしまうこともありえます。一方、プロに入ることを熱望し、努力していても、参入障壁が高く、その土俵に立つことすら許されない人が山ほどいます。今までのように逆指名とか希望枠だのがあると、どうしても価格高騰は避けられません。完全ウェーバー制にすれば、新人の契約金額も上限ももっと下げることが出来ます。そうすれば、日本球界ももっと多くのプロ野球選手を生み出すことが出来ます。アメリカの3A、2A、1Aのようなものです。そうすれば、プロとアマの垣根は低くなりますし、入ったり辞めたりするのもそれほど特別なことでなくなるはずです(今は皆鳴り物入りで入団するので、退団する時はさみしいものですし、第2の人生もうまくいくとは限らないようです)。ジャイアンツが言う自由競争はこのような参入障壁が高い中での自由競争であるため、何の実績も活躍の裏付けもなく、とてつもない金額が飛び交い、選手をダメにしていったのです。
これだけ毎年のように日本から主力選手がメジャーに流出する中で、日本球界が活力を維持しようと思ったら、やるべきことはパウエルを巡って争うことではないはずです。選手の実力を底上げしようと思ったら、裾野の拡大しかありません。ジャイアンツに代わる球界の盟主が現れないと無理ですかねえ。