憲政史上初の生前退位が行われ、本日新たな時代である「令和」が始まりました。
「平成」が始まった時には失礼ながら、この時代が30年以上も続くとは思っていませんでした。昭和天皇が崩御したのは、神代を除くともっとも長寿となる87歳だったため、先の天皇陛下(今日から上皇陛下)が即位したのはだいぶお歳を召していたためです。しかし、上皇陛下は昭和天皇が崩御された年齢に近い今日まで、精力的に象徴天皇としての務めを果たし、昭和時代の半分ほどの長さでしたが、多くの国民が陛下に敬愛の念を抱き、このような天皇陛下を戴いたことを本当に幸せだと感じたのではないでしょうか。
それは、必ずしも昭和天皇と比較してということではありません。昭和天皇も、昭和という激動の時代の中で、多くの思いを抱き行動されていたと思いますが、 人間ではなく「神」として過ごさなければならなかった時代の制約から逃れることは出来ないからです。
上皇陛下は、自身で戦争の時代を経験し、そうした時代を天皇として過ごした父である昭和天皇の姿を見て、自身が天皇となってからは、憲法に則り、平和を希求し、国民に寄り添う姿勢を貫かれたのだと思います。象徴天皇として、政治的な発言が制限される中で、沖縄やパラオ、サイパンなど戦争の被害を受けた地を慰霊するなど、平和の大切さを行動で示し続けたことには本当に頭が下がります。また、戦争はなくとも、多くの自然災害があった平成時代にあって、上皇后陛下とともに一貫して被災者に寄り添う姿勢を示し続けましたが、その姿勢こそがともすれば抽象的な「象徴」の意味であると確立したのは大きいと思います。
そして、何と言ってもこの生前譲位ということも上皇陛下らしい最後だと思います。天皇が「象徴天皇」としての務めを出来なくなったら退位すべきという自らを律する態度とともに、昭和天皇が病に倒れ崩御するまでの日本の自粛ムードに心を痛めていたということから、生前退位を希望されたようです。本当に最後まで国民に寄り添う天皇陛下だったと思います。
私も昭和時代の最後の方に社会人となったので、昭和天皇が倒れてから崩御するまでのことはよく記憶に残っています。昨年流行語になった「忖度」ではありませんが、頼まれもしないのに過剰な「自粛ムード」が日本社会全体に広がっていきました。まだ若くスーツやワイシャツ、ネクタイもたくさん持っているわけでもないのに、華美な服装は控えるようにと会社からお達しが出て、それが半年ほども続き、とても困ったことを覚えています。そういう身近なことだけでなく、テレビや行事なども含めて、日本全体が自粛ムードでしたから、昭和天皇が崩御して改元と言っても、めでたさよりも喪に服す雰囲気の方が強かったですね。
それに対して、今回始めて経験する生前退位による「令和」への改元は、何と祝賀ムードに包まれていることでしょうか。全力で平成の時代に天皇の責務を務め、次の時代への道筋をつけた上皇陛下のお気持ちに応えるためにも、新しい天皇陛下とともに、国民も明るく、平和な国にしてく努力をしていかなければなりませんね。