2週間前、新型コロナウイルスの感染拡大について、日本はまだ「持ちこたえている」と書きました。しかし、その後、20日(金)~22日(日)の3連休で、多くのコメンテーターが「緩んだ」と発言したように、大阪と兵庫の往来の自粛を要請した大阪府と違い、東京都は緊張感がありませんでした。
すると、23日(月)、24日(火)とそれまでを上回る10数名の感染者が都内で発生し、25日(水)には、何と感染者が41名まで膨れ上がり、20時には小池東京都知事が会見を開き、「今週末の土日の外出自粛」、「平日の夜間の外出自粛」を要請しました。特に、問題なのは、感染経路が不明の感染者が増えていることです。
小池知事の会見は、生放送もされてインパクトもあり、事前に近隣の神奈川、千葉、埼玉、山梨とも調整するなど、連携不足が見えた大阪・兵庫よりは用意周到でしたが、23日に東京オリンピック延期の方向が固まるのを待っての会見だったのではないかとの憶測もあったように、一歩判断が遅かったかもしれません。大阪の吉村知事が得ていたという今後の感染者数増加の試算を東京都も同じタイミングで得ていたということですので。
それを裏付けるよに、小池知事の会見後も、都内の感染者はさらに高水準となり、26日(木)には47名、27日(金)には40名となっており、週末自粛の初日となった本日28日(土)は、63名の感染者が判明しました。もちろん、平均潜伏期間が5日程度と言われますので、小池都知事の会見の効果はこれからですが、逆に、一歩判断が遅かったのでは(3連休の緩みの結果ではないか)と思われるデータではないかと思います。
一方、まだギリギリ徳俵で「持ちこたえている」と言えるかもしれないのは、本日の63名の感染者のうち、30名は台東区の病院での院内感染で、他にも数名の病院での感染があり、まだ極端に感染経路不明者が増大しているわけではないことです(詳細はこの後東京都から発表があるようです)。
本日からの週末の外出自粛要請については、要請された都民だけではなく、関連する企業にも大きな影響がありました。私の会社でも、小池都知事の会見翌日朝から事業所の営業休止などについて、議論を重ね、対応策を検討しましたが、難しいのは、判断のための材料が小池都知事の要請内容だけで、そこにはライブハウスなど既に判明しているクラスター発生要因に対しては具体的な発言があったものの、それ以外には具体的な指針がなく、その真意を忖度せざるを得なかったためです。
もちろん、日本の特措法や非常事態宣言には、海外のような強制力はなく、今回の都知事の発言は、非常事態宣言も出ていない段階のものなので、慎重にオブラートに包まざるを得なかったのは分かります。しかし、小池都知事の発言にもあったように、オーバーシュート(爆発的感染拡大)、ロックダウン(都市封鎖)の重大局面なのだとしたら、もう一歩踏み込んだ発信がほしいですよね。
報道を注意深く見ると、感染経路不明の感染者が増加していることが懸念されており、その行動歴を調査すると、どうやら繁華街での飲食店でのクラスターが疑われ(要するにお酒を飲む場所ですよね)、それが「夜間の外出自粛要請」につながっているようです。
しかし、今のところ、広く国民に周知されてるのは、「密閉」「密集」「密接(な会話)」の「3つの密」を避けることだけであり、既にクラスターとして、ライブハウスやスポーツジム、病院、介護施設などは知られていますが、「繁華街での飲食店(お酒を提供する飲食店)」でのクラスターが疑われるのであれば、もっと明確に発表すべきだと思います。さらに言えば、国は、こうした飲食店の営業補償をした上で、休業を強く要請すべきではないかと思います。でないと、企業ごとに様々判断した結果の対応にバラツキが出て、都民、国民に不信感を植え付けることになります(その他の業種を含めギリギリの判断をしている企業も困ることになります)。もちろん、様々な法的制約や財源の問題があることは分かりますが、「非常事態宣言」を出すような状況であれば、政治も非常事態の対応をすべきです。少なくとも首相夫人が呑気に花見などをしている場合ではないですね。
話は変わりますが、理科系はからっきしの私ですが、易しく書かれた理科系の本を読むことは大好きです。内容はほとんど頭に残りませんが、妙に頭に残っていることがあります。それは、「生物」の線引きについてです。生物についての完全な定義があるわけではないようですが、その一つでは、ウイルスは生物ではないとされており、それは何故かと言えば、自分だけで増殖することが出来ないからだそうです。ウイルスの次に小さい菌は、細胞分裂などで自己増殖できますが、ウイルスは宿主の中でしか増殖することが出来ません。
つまり、ウイルスは、目、鼻、喉などの人間の粘膜に入り込めなければ、増殖できずに死滅するのです(生物でないとしたら、死滅という表現も違うのかもしれませんが)。だからこそ、まずは、人間に入り込ませないように、密閉、密集、密接を避けるべきなのであり、それでも分からないうちに接触感染してしまう可能性があるため、高頻度で手洗いをすべきなのです。今回の新型コロナウイルスは結構長時間死滅しないことが報告されていますが、それでもウイルスは生物に寄生できなければ死滅するのです。こういう基本的なメカニズムの啓発もとても重要な気がします。念仏のように、うがい、手洗いなどと言っていても効果がなく、どういう理由で、どういうタイミングで、やらなければいけないのかということを知ることがとても大切だと思います。
さらに話は変わりますが、日本は、第二次世界大戦での敗戦後、75年もの長きにわたり戦禍を経験していない稀有な国です。それでも、その後、日本も様々な大きな出来事を経験してきました。今回延期となってしまった東京オリンピックも、最初は戦争で中止となり、高度成長期の1964年に開催となりましたが、残念ながら私は生まれておらず、経験していません。その後のオイルショックも、まだ幼かったため、ほとんど記憶にありません。
その後、自らの記憶にある大きな出来事と言えば、就職してからのバブル崩壊ですが、インパクトが大きかったのは、それ自体ではなく、その後の不良債権処理が進まず迎えた、1997年の金融危機です。それまでは全く考えられなかったような、拓銀、山一証券、長銀、日債銀といった名だたる金融機関が破たんし、心底恐ろしく思ったものです。というのも、その前年にはバブル崩壊から若干経済が上向きになり、私もローンを組んで、ここ八王子で自宅を購入した時期だったからです。子ども二人もまだ幼く、当時の私には目もくらむようなローンを抱え、愕然としたのを覚えています。
それでも、何とか日本経済も持ち直し、我が家も何とか八王子で地道に生活していくことが出来るようになりました。次に、私が恐怖を感じたのは、金融危機から10年前後の2008年のリーマンショックの時です。超優良企業であるトヨタ自動車が数千億円の赤字を計上し、当時はまだ存在感が大きかった電機メーカーも同じく数千億円の赤字を計上するに至り、その影響が裾野に広がるにつけ、経済全体に広がっていきました。あの時のことを一言で表現すると、「需要の消滅(蒸発)」です。普通、何か特殊要因で一旦需要が減っても、その要因がなくなれば、反動で増加するものです。しかり、リーマンショックでは、単に蒸発してなくなっただけで、戻りませんでした。つまり、国民はこの事象を一時的要因ではなく、ライフスタイルの変容が必要な事象と捉えたということです。それでも、企業は様々な対策を講じて、この難局を乗り越えました。
しかし、2011年3月11日、ご承知の通り、あの大震災がありました。このブログの中でもその時の状況はずっと書いていますが、この時も、もちろん経済的影響はありましたが、リーマンショックほどではなく、むしろ復興に向けての前向きな気分の方が勝っていたように思います。
そして、今回の新型コロナウイルスです。これがどこで終息するのか、まだ見通せませんが、これは本当にこれまで経験したことのない未曽有の事態です。日本だけでなく、アメリカの状態も大変なことになっていますし、世界レベルの問題になっています。
それでも、何とかこの事態を乗り越えていくしかありません。 先に書いたように、ウイルスは自分自身では増殖し、生き残ることは出来ません。そのことをよく理解し、ウイルスをいかに、自分自身に近づけないか。それが何度も言われている、「密閉、密集、密接の回避」、「高頻度の手洗い」です。それを徹底するよう、政府・行政機関、マスコミもしっかり周知することが重要と思います。