旧聞に属する話ですが、最近のニュース2件について書きたいと思います。
佐々木朗希ドジャース入団!
まずは、佐々木朗希投手のドジャース入団についてです。この件については、いろいろな意見が飛び交っています。
一つは、日本で規定投球回数に達するなどの結果を出さずにメジャーに挑戦するのは早いという意見。一つは、MLBの規定で25歳以下の海外選手は、マイナー契約しか結べず結果として、所属球団に入る移籍金が少額となることから、ロッテに対して恩返しになっていないという意見。一つは、佐々木朗希の兄が2028年のロス五輪に関係の深い広告代理店に所属している関係や山本由伸投手と親しいことなどから、元々ドジャースに入団するつもりだったのではないか、密約があったのではないかという意見。一つは、多くの球団が獲得に名乗りを挙げ、それらの球団に対し佐々木朗希側から近年球速が落ちたことに対する対策を宿題として出し、各球団のレポートを持ち逃げしたという意見。などなど。
それぞれがいろんな意見を持つのは結構なことですが、問題は、佐々木朗希投手の行動がルールに違反することかどうか、ということです。ドジャースと事前合意があったのではないかというのが、唯一のルール違反の疑惑ですが、(真相は分かりませんが)関係者はそれを否定し、MLBも否定をしていて、公式には何もルールに反することはしていません。かつて、ドラフト前日のルール上の空白の1日に契約を結ぶという奇策で世間を騒がせた江川問題は、違法ではないかもしれませんが、脱法というようなもので、大きな批判を呼んだのはやむを得ません。これに対して、佐々木朗希投手には、そのような違法、脱法はありません。
もちろん、感情的に納得できないから、こうした色々な意見が出てくるのでしょうし、それを否定するつもりはありませんが、そうした意見を受けてヒールとなってもという覚悟の上での佐々木朗希投手の行動でしょうし、結果が出なければ色々言われることも覚悟の上なのだと思います。WBCでホームランを打たれた時の悔しそうな表情にも、負けん気の強さが見えましたが、今回の一連の行動にも、いかにも自分の信条に頑固な芯の強さが窺えます。誰にせいにも出来ない環境に身をおいての、彼の活躍を見守りたいと思います。
もう一つ、SNSで「海外で日本人同士で群れる留学生のようだ」というような批判もあったようですが、これなどは反論する意味もない意見としか言えないと思いますね。より高い環境を求めてメジャーに飛び込んでいる彼らが、「日本人がいるから」などという短絡的な発想のわけがありません。ただし、佐々木投手が言ったように「日本人を受け入れる環境が整っているか」ということは、自分のパフォーマンスに影響を与える重要な要素でしょうし、メジャーに適応する上で、欧米人とは身体の違いがある日本人からアドバイスを受けられる環境は重要だろうと思います。それは「群れる」などということとはまったく別次元のことだと思います。佐々木朗希投手は、まだ身体が完全に出来上がっていないということで、ロッテでも相当慎重に育てられてきましたし、結局規定投球回数に達することもありませんでしたが、今後どのようにするかは自らの責任で慎重に取り組むことが必要になるでしょうね。身体を強くするために、大谷翔平選手のようにウエートトレーニングで身体を大きくすることが本当にパフォーマンスを上げることにつながるのかどうかは分からないですからね。確か三浦知良選手だったと思いますが、かつて世界で通用するフィジカルを手に入れようとウェートトレーニングを身体改造をしたら、スピードやキレを失ったことがありました。そういうことも含めて、佐々木投手自身の責任においてのメジャー挑戦が始まるのだと思います。
大阪国際女子マラソンニューヒロイン誕生!
外で昼飯をさくっと食べてテレビで観ようと思っていたのですが、思いのほか時間を食って、観始めた時には、10数km過ぎで、大阪の女王とも言える松田瑞生選手が遅れ始めていたところでした。
トップグループは、昨年優勝のエチオピアのエデサ選手を筆頭に、日本人は、パリ五輪で6位入賞した鈴木優花選手(第一生命)、引退から復帰して1年経っていない伊澤菜々花選手(スターツ)、早稲田大ではランニングサークルに所属していたという小林香菜選手(大塚製薬)の三選手でした。
鈴木優花選手もマラソンは5回目とそれほど経験があるわけではありませんが、どの大会でも安定した成績を残りており、何よりも五輪代表を決めるMGCで優勝し、過酷なパリ五輪で6位入賞した力は圧倒的と思われました。すると、小林香菜選手が一旦遅れながら一度は追いつきましたが、最初に三選手から遅れていきました。
次に、やはり復帰から間もない伊澤選手が遅れ、鈴木優花選手とエデサ選手の一騎打ちになるかと思われましたが、自己ベストを大きく上回るペースで走っていた鈴木優花選手も徐々に遅れを取りました。しかし、鈴木選手も諦めずに、エデサ選手との差を縮めては離され、縮めては離されを繰り返して、最終盤にさしかかりました。
すると、ここで遅れていたはずの小林香菜選手の小柄な身体が少しずつ大きくなり、ヒタヒタと迫ってくるではないですか。小林選手は、小柄で典型的なピッチ走法なため、お世辞にも「美しいフォーム」とは言えません。一方、鈴木優花選手は、長い足の膝から先が前にしっかり伸びるストライド走法で本当に「美しいフォーム」です。しかし、この大きなフォームは、いったん遅れ始めると、なかなか元に戻すことが難しいようです。対するピッチ走法は、途中ペース変化でスピードを上げられると対応が難しいかもしれませんが、ずるずるペースが落ちないという利点があります。終盤、鈴木選手が3分16秒前後/kmから3分30秒/kmにペースを落とす中、小林選手は逆に、落としていたペースを3分16秒/km前後に上げていき、グングン鈴木選手との差を縮め、残り800mで遂に鈴木選手を捉え、スピードがあるはずの鈴木選手がついていくことはできませんでした。
当然のことながら、小林選手は亀のように遅いわけではありませんし、鈴木選手が相手を見くびり手を抜くような選手ではないのですが、あまりに対照的な二人であり、あまりに劇的な終盤での逆転劇だったため、思わず「ウサギとカメ」の寓話を思い出さずにはいられませんでした。
一般にはまったく無名の小林香菜選手は、歴代10位の好タイムで一躍世界陸上代表の有力候補に躍り出ました。一方、敗れたとはいえ、鈴木優花選手も自己記録を大幅に更新し、チャレンジした中で安定した成績を残したことで、今後がますます楽しみです。一時停滞していたマラソン界も、男子も女子も楽しみが増えてきました。
野球も、マラソンも、世界での活躍が楽しみですね!