新ヨゴ皇国で始まったタルシュ軍の侵攻で瀕死の重傷を負うタンダ、町人を戦火から避難させながらタンダを探し求めるバルサ、ロタ-カンバル同盟を成立させてロタ-カンバル混成軍3万を率いてタルシュ軍と戦いながら人の命を奪うことに悩み苦しむチャグム、新ヨゴ皇国宮廷内の策略とタルシュ帝国幹部の確執を順次展開させながら、政治の世界ではしたたかに成長したチャグムを中心に平和が訪れ、バルサは庶民として平和な生活へと戻っていくまでを描いたファンタジー。
守り人シリーズの完結編として描かれ、特に虚空の旅人・蒼路の旅人から展開した南の大陸のタルシュ帝国と北の大陸諸国のドラマを完結させシリーズの総集編という位置づけになっています。それだけに構想が雄大で、登場人物・視点が多岐にわたり、それぞれの側からの進行を追う形になり、それだけでストーリー展開はおもしろいのですが、その分それで手一杯で人物の書き込みに若干物足りなさも感じました。
異世界のナユグとの関係も、第1部の始めから気を持たせたわりには結局青弓川の氾濫・光扇京の水没を導く道具立てになっただけで、現世界と異世界の関係についての洞察というか踏み込んだ解明がないのは、読み終えて不満が残りました。第1部でバルサの衰えを強調したのも、第2部・第3部ではストーリーを進めるのに精一杯でその後の展開には影響ない感じでしたし。個人的にはもう少しタンダを幸せにしてやりたかったなと思います。チャグムが晴れ晴れとするのに対し、タンダやヒュウゴはちょっとかわいそう。庶民の男も幸せにしてやればいいのにと、庶民びいきの私は思ってしまうのですが。
本の体裁がいかにも子ども向きなので大人が読むには抵抗があるかもしれませんが、守り人・旅人シリーズ全体としては、日本人が読む限りでは、指輪物語クラスには評価していい作品だと、私は思いました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/kaeru_en2.gif)
上橋菜穂子 偕成社 2007年3月発行
守り人シリーズの完結編として描かれ、特に虚空の旅人・蒼路の旅人から展開した南の大陸のタルシュ帝国と北の大陸諸国のドラマを完結させシリーズの総集編という位置づけになっています。それだけに構想が雄大で、登場人物・視点が多岐にわたり、それぞれの側からの進行を追う形になり、それだけでストーリー展開はおもしろいのですが、その分それで手一杯で人物の書き込みに若干物足りなさも感じました。
異世界のナユグとの関係も、第1部の始めから気を持たせたわりには結局青弓川の氾濫・光扇京の水没を導く道具立てになっただけで、現世界と異世界の関係についての洞察というか踏み込んだ解明がないのは、読み終えて不満が残りました。第1部でバルサの衰えを強調したのも、第2部・第3部ではストーリーを進めるのに精一杯でその後の展開には影響ない感じでしたし。個人的にはもう少しタンダを幸せにしてやりたかったなと思います。チャグムが晴れ晴れとするのに対し、タンダやヒュウゴはちょっとかわいそう。庶民の男も幸せにしてやればいいのにと、庶民びいきの私は思ってしまうのですが。
本の体裁がいかにも子ども向きなので大人が読むには抵抗があるかもしれませんが、守り人・旅人シリーズ全体としては、日本人が読む限りでは、指輪物語クラスには評価していい作品だと、私は思いました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/kaeru_en2.gif)
上橋菜穂子 偕成社 2007年3月発行