伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

ファイアブリンガー2 闇の月

2007-03-15 08:11:25 | 物語・ファンタジー・SF
 ユニコーンの王子ジャンが、1つ年上の女戦士テックと結ばれた後すぐにグリフォンに襲われて嵐の海に流されて人間に捕らわれ、人間に捕らわれていた馬リエンナとともに人間の手を逃れてユニコーンの谷に戻りテックと子どもたちと再会するまでを描いたファンタジー。
 はっきりいってジャンが記憶を失って人間に囚われ、人間の文明の偉大さに圧倒される前半は、話も停滞気味でかなり読み続けるのがしんどい。ユニコーンの世界でも厳しい冬にジャンの父コーアが神の名の下に独裁を敷き批判者を弾圧し餓死に追い込んでいく様子は読んでいて寒々としますし。後半、テックがコーアの追っ手を振り切って母の洞窟に逃げ込み、ジャンが人間の手から逃れようとするあたりからようやく話のテンポがよくなりますけど。
 人間の世界でもユニコーンまがいの神をかたる者の狂信的な独裁とそれへのおそれと反発があり、それを利用してジャンが脱走することになりますが、そのあたり、人間にもユニコーンにも共通の性なのか、どちらの世界でも悪い者や問題はあるということで考えさせられます。
 そしてジャンはユニコーンの谷に戻る途中、ジャンを襲ったグリフォンのイリッシャーが傷ついて飛べなくなっているのと遭遇し、グリフォンの世界にも自分たちの伝説も仲間割れもあり、ユニコーンがワイヴァーンに聖なる丘を追われたようにグリフォンは餌場の谷をユニコーンに追われたこと、そのためにグリフォンは毎春ユニコーンを子どもの餌のために襲わざるを得なくなったことを知ります。ジャンとイリッシャーはお互いの種族の過去と伝説をかたり理解し、和解への道を模索することになります。他方、テックは母ジャ=リラが元は馬だった(月の泉の水でユニコーンになった)ことを知り、またジャ=リラが育てたパンの子どもたちに助けられていました。そのことを知ったジャンはパンとの和解の道も探ろうとします。こうして、闘いを指向していたファンタジーが話し合いによる和解を目指すことになり、焦点はワイヴァーン(人間も?)との決着が闘いによるのか否かということになりそうです。もっとも、狂信的な道を一人歩み続ける父コーア、テックが実はコーアの娘(まだ明かされていませんが、どう読んでもそうですね)でジャンの姉という問題が、なお火種として残されていますが。


原題:Dark Moon
メレディス・アン・ピアス 訳:谷泰子
東京創元社 2006年2月28日発行 (原書は1993年)
コメント
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