故郷「聖なる丘」をワイヴァーン(毒蛇に似た架空の生物)に追われたユニコーン一族が故郷に帰還することを誓って訓練と闘いの日々を過ごすファンタジー。
ユニコーン一族はかつて住んでいた聖なる丘に、一時の仮の住まいを求められて許したワイヴァーンが大量増殖しその数と毒と牙の威力に敗れ、故郷を捨てて草原をわたり谷にたどり着いて住みつき、いつか伝説のファイアブリンガーが一族に生まれてワイヴァーンを倒す日を夢見てその日に備えて戦士を育て多くの掟を作って規律の取れた生活をしています。
主人公のジャンは、ユニコーン一族の王子コーアの息子ですが、いたずら者で外れ者への憧れもあり度々掟を破り、父親ににらまれます。
1巻では掟を破り規律を乱したジャンが、そのために父親や自分の危機を招きつつ最後にはワイヴァーンの司祭とその卵を滅ぼしてワイヴァーンの洞窟から逃れるという話になっており、掟と掟破りが話の1つの軸になっています。一族の安全を守るためにコーアが張り巡らせた掟の意味と、その掟の外で自由に生きる「脱けもの」の存在やさらにはユニコーンの敵たちも環の1つと語る(265頁)大いなる神アルマの言葉。そのテーマで掟をめぐって考えこむところですが、一方でジャンの掟破りが魔法に操られたものであるように描かれ、それもワイヴァーンが操った(204~210頁)のかグリフォンが操った(268頁)のかもあいまいで、ジャンの意思での掟破りでないとなるとそのあたりがぼける感じです。まあ、それが今度は夢見ることが邪魔で危険なことなのか能力なのかという問いかけにもつながるのですが。
1巻は最後にジャンがファイアブリンガーであることがわかり、祖父の死に伴ってジャンが王子になるところで終わりますが、既に敵対する生物もアルマの環の1つとされていることで闘いによる解決以外の道が予測されます。ファイアブリンガーが誰かなんてもろネタバレなんですが、この設定でファイアブリンガーがジャン以外の者であると考える読者はいないと思います。また話し手が誰であるかについて冒頭で謎のように扱っていますが、話し手が誰であるかは、話にほとんど影響がなく、終わりの方で明かされても特段の感慨もありませんでした。ちょっとそのあたりの小細工はあまりうまくない作者だなと感じます。
原題:Birth of the Firebringer
メレディス・アン・ピアス 訳:谷泰子
東京創元社 2005年7月29日発行 (原書は1985年)
ユニコーン一族はかつて住んでいた聖なる丘に、一時の仮の住まいを求められて許したワイヴァーンが大量増殖しその数と毒と牙の威力に敗れ、故郷を捨てて草原をわたり谷にたどり着いて住みつき、いつか伝説のファイアブリンガーが一族に生まれてワイヴァーンを倒す日を夢見てその日に備えて戦士を育て多くの掟を作って規律の取れた生活をしています。
主人公のジャンは、ユニコーン一族の王子コーアの息子ですが、いたずら者で外れ者への憧れもあり度々掟を破り、父親ににらまれます。
1巻では掟を破り規律を乱したジャンが、そのために父親や自分の危機を招きつつ最後にはワイヴァーンの司祭とその卵を滅ぼしてワイヴァーンの洞窟から逃れるという話になっており、掟と掟破りが話の1つの軸になっています。一族の安全を守るためにコーアが張り巡らせた掟の意味と、その掟の外で自由に生きる「脱けもの」の存在やさらにはユニコーンの敵たちも環の1つと語る(265頁)大いなる神アルマの言葉。そのテーマで掟をめぐって考えこむところですが、一方でジャンの掟破りが魔法に操られたものであるように描かれ、それもワイヴァーンが操った(204~210頁)のかグリフォンが操った(268頁)のかもあいまいで、ジャンの意思での掟破りでないとなるとそのあたりがぼける感じです。まあ、それが今度は夢見ることが邪魔で危険なことなのか能力なのかという問いかけにもつながるのですが。
1巻は最後にジャンがファイアブリンガーであることがわかり、祖父の死に伴ってジャンが王子になるところで終わりますが、既に敵対する生物もアルマの環の1つとされていることで闘いによる解決以外の道が予測されます。ファイアブリンガーが誰かなんてもろネタバレなんですが、この設定でファイアブリンガーがジャン以外の者であると考える読者はいないと思います。また話し手が誰であるかについて冒頭で謎のように扱っていますが、話し手が誰であるかは、話にほとんど影響がなく、終わりの方で明かされても特段の感慨もありませんでした。ちょっとそのあたりの小細工はあまりうまくない作者だなと感じます。
原題:Birth of the Firebringer
メレディス・アン・ピアス 訳:谷泰子
東京創元社 2005年7月29日発行 (原書は1985年)