伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

だまされない<議論力>

2007-03-03 08:09:26 | 人文・社会科学系
 日本人の苦手な、議論の仕方、小論文の書き方について、具体例を挙げながら解説した本。
 真理に到達したり議論力をつけるには負けて屈辱を味わう必要がある、「負けることでしか新しく高い真理に到達できない。なぜなら、勝つだけなら自分がはじめから持っていた真理と出会うだけだからだ。新しい真理と出会うためには、積極的に負けねばならない。負けてはじめて、こういう考え方があったのか、とわかる。負けて感謝できる、それが議論の仲間だ」(95頁)う~ん、深いですね。
 もっとも、この本、本論の議論の仕方そのものよりも、議論になっていない悪い例、統計等を悪用したごまかしの議論の例を具体例・実名入りで批判しているのが、おもしろい。そっちの方が読みどころかも


吉岡友治 講談社現代新書 2006年8月20日発行
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百姓から見た戦国大名

2007-03-03 07:49:00 | 人文・社会科学系
 戦国時代の戦争が行軍の経路の住民への略奪・人さらいを伴い、戦争が作物・田畑等の破壊・略奪等による飢饉を生み、飢饉が口減らしと他国での略奪(食料調達)を兼ねた戦争を生むという悪循環を生じていたこと、村と村との戦争が近隣の村への支援要請、領主・有力者への支援要請から大規模な戦争へと容易につながっていったこと、大名の家中への統制が進むことにより村と村との戦争が上位者に波及しなくなると共に、大名側でも村・町の自力救済(暴力による解決・報復)を禁じて領主への訴訟(直訴)を認めて訴訟というよりコストの低い解決へと導いていったこと、さらに大名の権力が統合されていって秀吉の天下一統、江戸幕府の成立で平和な時代となっていた経過が説明されています。やはり自力救済(実力行使)の禁止と民事訴訟の普及は表裏一体で進められたのですね。弁護士としてはそうだろうなあと思います。
 こちらが著者のテーマと思いますが、さらに村側が安全確保のためにより有力な支配者を選択していったこと、大名も村からの年貢がなくなると困るので飢饉の際には年貢の減免や徳政令等を行い、村と大名側の間で事実上の減税交渉が進められたことも語られています。民衆側のしたたかさを認識するのはいいと思いますが、でもやはり民衆側には選択の余地や余裕は少なかったと思われ、それを過大に見るのはちょっと疑問を感じます。
 文書が豊富にある小田原北条氏の例が中心なので、他の大名にどこまで一般化できるかも慎重に見た方がいいかも。


黒田基樹 ちくま新書 2006年9月10日発行
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