伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

夕張 破綻と再生

2007-03-11 09:49:12 | 人文・社会科学系
 夕張市の財政破綻問題を論じた本。
 著者の主張は、炭鉱がほぼ唯一の産業だった夕張で国のエネルギー政策の転換に伴い炭鉱が閉山した後跡地の住宅や上水道、公共施設の整備などの閉山後処理対策に583億円(国・道の補助金はうち185億円)も投じざるを得なかったこと、その後国・道の政策に沿って観光開発に投資したがこれが失敗したこと、さらに小泉改革で地方交付税が絞られたことが夕張市の財政破綻の主要な原因であり、夕張市側の問題は主に観光開発の無謀さと会計操作・情報非公開にあるというものです。そして国や道の責任を見ないで夕張市の「自己責任」を強調することで自治体再建法制を整備して中央官僚の統制を実質的に強める道具にされているのでは、という著者の指摘には、考えさせられます。
 夕張市は既に市としては65歳以上の高齢者の比率が最高であり15歳未満の若年者の比率も最低という全国一の少子高齢化の市になっています。その夕張に消防や医療などのサービスまで削るのでは住民は生きていけないでしょうし、税率を上げてサービスを削る国の求める財政再建計画に従えば若者はさらに出ていって移住できない高齢者だけの町になっていくでしょう。近年のこの国の政治はかなり露骨な弱肉強食路線ですが、ここまでやっていいのか政治と官僚のあり方の問題としても考え直す必要があると思います。


保母武彦、河合博司、佐々木忠、平岡和久
自治体研究社 2007年2月10日発行
コメント
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