伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

魔使いの呪い

2007-11-10 07:00:37 | 物語・ファンタジー・SF
 魔使いシリーズの第2巻。第2巻では、魔使いの弟子になって半年のトムが、かつて全盛期の魔使いが勝てなかった古代の邪悪な霊ベインと対決したり、無実の者を魔女と決めつけて処刑し続ける権力者魔女狩り長官に捕まった魔使いとアリスを助け出したりすることになります。また第2巻では魔使いが弱っており、トムは多くの場面で魔使いの力に頼らずに自分でボガートや霊と戦わざるを得なくなっています。
 第2巻になって、厳しいことを言う魔使いが女性関係で過ちを犯したり魔女を助けたりした過去や、魔女だったトムの母親の過去が明らかにされ、物語が大きく展開します。正と邪の間から邪の方に踏み出したアリスが、しかし結果的には魔使いが邪と指摘するアリスの選択によって魔使いや多くの人が救出されるという形で描かれ、魔使いがかつて犯した過ちや、トムの母親も魔女だったという展開から、正と邪の関係が大きなテーマとなってきます。「すべてが善の者も、すべてが悪の者もいない。わたしたちはみな、そのあいだのどちらか寄りにいるの。ただ、どの人生にも重要な一歩を踏み出す瞬間がある。光の側に行くか、闇の側に行くかの瞬間よ。」(252~253頁)というトムの母の言葉、「悪はおれたちひとりひとりの中にあるものだ。ちょうど、火花さえあれば、ぱっと燃えあがる小さな火種のようにな。」(371頁)という魔使いの言葉など考えさせられます。
 物語はトムの視点から語られていますので、トムの成長は読み取れますが、アリスは強い意志やしたたかさを持つと同時に川を渡れない場面でのか弱さや終盤での従順さが併存して理解しにくいキャラクターになっています。


原題:THE SPOOK’S CURSE
ジョゼフ・ディレイニー 訳:金原瑞人、田中亜希子
東京創元社 2007年9月28日発行 (原書は2005年)
第1巻は11月9日に掲載
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