伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

パート・派遣・契約社員の法律知識

2008-06-08 23:58:49 | 実用書・ビジネス書
 もっぱら経営者側でパートタイマー、派遣労働者、契約社員を使用する場合に企業側にいかに有利に使うかという観点から中小企業診断士の著者がアドヴァイスする本。
 タイトルだけだと労働者側も読むことが予定されているように見えますが、労働者側に有利な方向のアドヴァイスはほとんどありません。
 ただ経営者側に立つにしても、いまどき、解雇は原則自由だとか書いてまるで30日前に解雇予告すれば好き放題に解雇できるかのような誤解を与える部分(32~33頁、67頁)があるのは問題です。後の方(113~115頁)では就業規則の解雇事由とか解雇権濫用のことも一応説明してはいますが。
 それに労働契約と就業規則の関係も単純に就業規則が優先するとだけ書いています(55~56頁)が、それは労働契約が就業規則より低い労働条件の場合で、労働契約の方が高い労働条件の場合は労働契約の方が優先されます。それを説明しないと労働契約を無視するあこぎな経営者が出てきかねません。
 それから期間の定めのある労働契約の場合に、この本では期間中の解雇はやむを得ない理由がないとできないことは説明していますが、期間満了による雇い止めについては説明していません。この本だけ読んでいると経営者はその場合フリーパスと考えることになると思います。しかし、有期雇用の更新が繰り返されると雇用継続の合理的期待が生じ、解雇権濫用の法理が類推適用されることは、ずいぶん前から最高裁判例となっています。ですから、更新が一定程度繰り返されたら雇い止めはまったく自由ではないということを、説明するのが労働法関係の本の基本的なお約束ですが、この本ではそのことがひと言も書かれていません。
 こういう本だけ読んで労働者への対応を考える経営者がいるとすればとても困ったことになります。
 法律実用書にしては、「でしょう」とか「でしょうか」とかいう自信なさげな言い回しが多すぎますし。


藤永伸一 日本実業出版社 2008年5月1日発行
コメント
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