中国生まれ、アメリカ留学経験ありの一橋大学教授による日本、中国、アメリカの刑罰比較。
前書きを読んだ時点で、そりゃ世界一の死刑量産国と懲役何百年なんて判決が平気で出る国を比較の対象にしたら最初から結論決まってるじゃないのと思います。
前半は、刑罰が時代と社会で大きく異なっていることを説明し、やっぱり日本の常識は世界の非常識って言いたいんでしょうねと思って読んでいたら、案の定、死刑が少ないとか経済事犯や薬物犯罪がいかに軽いかなど、日本の刑罰は軽いと論じられます。
しかし、その後にもう一段あって、日本の刑罰は重罪事犯には(中国やアメリカと比べて)軽いが、中国なら犯罪扱いされないような軽微事犯でも逮捕され処罰される、ささいなことでも処罰されるという意味では中国より刑が重いと指摘されています。中国では、例えば窃盗も公務員の1ヵ月分の給料程度以下は犯罪にならないなど、軽微事犯は犯罪扱いされないし(130頁)、日本と違って刑罰を受けても地域社会では受け入れられる、つまり国は国、地域社会は地域社会という意識だそうです(163~165頁)。日本の方が民間人もお上と一体になって犯罪者を指弾し社会的制裁を与え、その結果社会復帰が困難だというのです。
さらに、裁判や学者も法律の解釈を最大限まで拡げて処罰を拡大しようとしている、例えば共謀共同正犯なんて刑法の条文を拡大して本来は正犯扱いできないものを判例で勝手に拡大したもの、という指摘(133~136頁)を中国出身の学者から受けるのは、ちょっとカルチャーショック。
そのあたりの刑罰についての考え方の違いを意識させ、別の視点を提供してくれるところが刺激的な本でした。
王雲海 集英社新書 2008年4月22日発行
前書きを読んだ時点で、そりゃ世界一の死刑量産国と懲役何百年なんて判決が平気で出る国を比較の対象にしたら最初から結論決まってるじゃないのと思います。
前半は、刑罰が時代と社会で大きく異なっていることを説明し、やっぱり日本の常識は世界の非常識って言いたいんでしょうねと思って読んでいたら、案の定、死刑が少ないとか経済事犯や薬物犯罪がいかに軽いかなど、日本の刑罰は軽いと論じられます。
しかし、その後にもう一段あって、日本の刑罰は重罪事犯には(中国やアメリカと比べて)軽いが、中国なら犯罪扱いされないような軽微事犯でも逮捕され処罰される、ささいなことでも処罰されるという意味では中国より刑が重いと指摘されています。中国では、例えば窃盗も公務員の1ヵ月分の給料程度以下は犯罪にならないなど、軽微事犯は犯罪扱いされないし(130頁)、日本と違って刑罰を受けても地域社会では受け入れられる、つまり国は国、地域社会は地域社会という意識だそうです(163~165頁)。日本の方が民間人もお上と一体になって犯罪者を指弾し社会的制裁を与え、その結果社会復帰が困難だというのです。
さらに、裁判や学者も法律の解釈を最大限まで拡げて処罰を拡大しようとしている、例えば共謀共同正犯なんて刑法の条文を拡大して本来は正犯扱いできないものを判例で勝手に拡大したもの、という指摘(133~136頁)を中国出身の学者から受けるのは、ちょっとカルチャーショック。
そのあたりの刑罰についての考え方の違いを意識させ、別の視点を提供してくれるところが刺激的な本でした。
王雲海 集英社新書 2008年4月22日発行