伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

ドリーミング・オブ・ホーム&マザー

2008-06-11 08:58:17 | 小説
 内気で平凡な編集者田中聡と幼なじみの快活で行動力のあるライターさとうゆう、年上の人気作家小川満里花が繰り広げる恋愛関係に、満里花の飼い犬と犬コロナウィルスの突然変異体から蔓延した東京SARS騒動を絡めた恋愛&サスペンス小説。
 前半は、煮え切らない聡と行動的なゆうの、一向に進行しない友だち愛を軸とした恋愛小説です。この平凡で内気な男性主人公に、魅力的で行動的な女性がリードして思いを遂げるってパターン、考えてみたら、かつての少女漫画の王道(田渕由美子とか陸奥A子とかの・・・って言っても40代以下は知らないでしょうね)ですね。男の方が、平凡なあなたにもいつか白馬の王女さまがって夢想していてもいいのよって言われる時代なんでしょうか。
 ただ、ゆうが聡のことを「いま同じ街に住んでます。おたがいの部屋でしょっちゅう飲みます。手をつないで散歩します。セックスはまだです。世間はそれを信じてくれません。」と紹介する場面(56頁)。こういう関係って、目の前で言われたら赤面しますが、しみじみあぁいいなぁと思います。私はここまででも、あ、読んでよかったなと思ってしまいました。
 後半は、SARS騒動をめぐるサスペンスになって、恋愛関係はバックグランドに引いていきます。
 恋愛ものとしてみたときには聡の行動力のなさ、優柔不断ぶりに「おいおい」と思う場面が多いですが、満里花の飼い犬が感染源と睨みながら、その犬に以前に酷く噛まれたゆうを気遣う場面が1つもないのはかなり不思議。
 ラストでひねりというか混迷というか予想外の展開があり、キツネにつままれたような読後感でした。私の好みとしては、SARS騒動は捨てて恋愛もので書き込んでくれた方がよかったと思うのですが。


打海文三 光文社 2008年2月25日発行
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ユングフラウ

2008-06-11 08:13:25 | 小説
 常識人と自己規定しながら、結局は飲んではまわりの男と次々肉体関係を持つ26歳の編集者沢井翠と、大学時代からの恋人、担当した大学教授、同僚のカメラマンなどに、大学の同級生の「親友」や身勝手で主人公と同じくらい尻軽の同僚が絡んで進む男女関係を描いた小説。
 やってることはただの欲求不満女なのに会話が理屈っぽいというか流れが固いというかの女たちのキャラが、どうも男の側に都合よく設定されてるのとどこか上滑りな感じがして、話に乗りきれませんでした。それと、作者と同年齢の作家「梨原」だけが、話はスケベだが意外に善人という設定が、いかにもいやらしい。
 短編連作をまとめて読むため、前の話とのつながりが悪いところがあり、決着を付けずにしらばっくれているところがあったりするのが、今ひとつ。単行本化する時にきちんと手を入れて欲しいですね、こういうところは。最後に初出が出ているのを見ると、何と連載は7年以上前。何で今頃、単行本化したんでしょうね。


芦原すなお 東京創元社 2008年1月15日発行
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