伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

優しくしたいのにできない

2008-06-22 20:29:53 | 人文・社会科学系
 高齢になった親との関係、自宅で暮らし続けてもらうか同居を求めるか老人ホームに入ってもらうか等を決めるときに考えるべきことなどをまとめた本。
 年をとることで5感が鈍り、そのために感じ方・受け止め方が変わり、そのギャップに双方が苛立ち気味になること、そこで相手はどう感じているのか、変化や動揺を受け入れることなどが説明されています。
 同居などを決めるときには一時の罪悪感で決めてはいけないこと、施設への入居を決めるときには施設長の意見や一時の罪悪感、親の憤慨する様子に振り回されないようにすべきことなど、一歩引いて冷静になることが必要と語られています。あらゆる問題に当てはまるとも言えますが、必要なアドヴァイスです。
 問題のある人というのはたいてい自分で自分のめんどうを見きれないものですし、他人から「そんなことをするのはやめてほしい」と頼まれても、やめられないものなのです、そういう人を口で言い負かしても意味がありません、できるかぎり穏やかな気持ちで自分が責任を持ってできることとお互いに期待しても仕方がないこととを見きわめるように心がけてください(190頁)というのは、いろいろな意味でいろいろな場面で考えさせられるアドヴァイスです。なかなか実行するのは大変ですが。


原題:Your Aging Parents : Reflections for Caregivers
アール・A・グロルマン、シャロン・H・グロルマン 訳:松田敬一
春秋社 2008年5月25日発行 (原書は1997年)
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学校裏サイト

2008-06-22 11:01:17 | ノンフィクション
 電話にも使えるパーソナルインターネット端末「ケータイ」の子どもの利用の危険性を、学校裏サイト、プロフ、SNSを中心にレポートした本。
 学校裏サイト等でのわいせつ情報の発信(商業サイトへのリンクとともに子ども自身がケータイで裸体写真を撮影して貼り付ける等)、誹謗中傷・いじめ(なりすましの虚偽発信も含む)、暴力・犯罪誘発情報の発信等の危険性、悪意がなくても個人情報の発信が各種の商業利用・詐欺・恐喝材料になり、しかも一旦発信した情報は完全には抹消・回収できないこと等が、繰り返し紹介されています。そして、ケータイの場合、個人利用の端末なので親や教師がほとんどチェックできずに放置されていることも。このあたりは、ネット利用を論ずるときには当然のことですが、ちょっと書きぶりの大仰さが鼻につきます。著者が警察庁の「少年のインターネット利用に関する調査研究会」座長ということで納得できるとともに、そのおかげでうさんくさくも見えるところですが。
 ただ、学校裏サイトの管理人の学生が仲間の自由利用の場を提供するという建前とともに怪しげな広告のアフィリエイトで稼いでいることや、学校裏サイト対策は説教をしても効果がなく、ネットではいくら秘密と言っても世界中誰でもみることができること、従って教師も監視できることを伝え、自分たちのやっていることを自分たちで客観的に評価・自覚させることが有効という話は、なるほどと思いました。


下田博次 東洋経済新報社 2008年4月10日発行
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公務員の異常な世界

2008-06-22 00:12:28 | ノンフィクション
 元特殊法人職員の著者が公務員の労働条件・給料の厚遇ぶり、税金の無駄遣いぶりをレポートした本。著者自身の経験した事実と報道された事実、公表された統計類を混ぜ合わせてやや揶揄的に論じています。
 役所の他人には厳しく身内には信じがたく甘いわがままさというか小ずるさや税金の無駄遣いぶりを批判するのは当然ですし、そういう方面の話は読んでいても共感します(というか役所のやり方に、いつもながらではありますが、呆れます)。しかし、給料や労働時間、休暇、福利厚生などの労働条件についての書きぶりには、私は疑問を感じます。
 著者の主張は、公務員の労働条件が民間と比較して異常に厚遇されているという論調に終始していて、その比較対象の民間が労働者をいじめ過ぎているのではという視点は皆無です。私も労働条件に官民格差があるのはよくないと思いますし、紹介されている例の中には酷すぎるものもあるとは思いますが、民間企業が本来労働者に確保すべき労働条件を守っていない部分もかなりあると思います。格差の是正のために民間の方の労働条件を上げるべき部分も相当程度あるはずです。
 著者の批判の矛先は、役所全体ないしトップよりも公務員の労働条件を引き上げている労働組合に向けられています。
 メディアにありがちな傾向ではありますが、とんでもなく恵まれている官民のトップを問題にするのではなく、自分たちよりも少し恵まれている一般公務員を妬み足を引っ張ることに誘導していくことで、結果的に公務員の労働条件を引き下げ、それが労働運動全体の衰弱を招いて民間労働者の労働条件もさらに切り詰められることになると思います。やりたい放題のリストラ、非正規雇用化、労働条件切り下げをしてきた民間企業経営者にはとてもありがたい書き方ですよね。
 著者は志願して予備自衛官をしているそうですが(65~66頁)、自衛隊の一般職員だけはけなされずに同情と賛美を送られているのもいかがなものかと思いました。


若林亜紀 幻冬舎新書 2008年3月30日発行
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