伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

新自由主義の帰結 なぜ世界経済は停滞するのか

2013-08-25 18:10:53 | 人文・社会科学系
 大きな政府による経済管理は非効率であるだけでなく人間の自由を奪うとして戦後資本主義・ケインズ経済学を批判して登場した新自由主義が、アメリカ経済を復活させたというのは誤りであり、サブプライム金融危機は新自由主義の理論と政策の誤りに起因するなど、新自由主義を批判する本。
 ニューディールの考え方を受け継いだ戦後資本主義・ケインズ経済学は大きな政府によりむき出しの市場の力を規制して貧困・不況・不平等という古典的な資本主義の病を抑えていた。しかし、新自由主義はそれらの制度を解体し、減税や規制緩和により金持ちと企業をやる気にさせ富を創出すれば恵まれない人々にも富が行き渡ると主張して、富裕層に対する減税と規制緩和を押し進めたが、結果は富裕層への富の集中と労働者の賃金抑制、つまり格差拡大であった。アメリカで共和党保守派は小さな政府を標榜し財政規律を重んじるとされているが、現実には共和党政権時代(レーガン、ブッシュ父子)に富裕層への減税と軍事支出の拡大で財政赤字を拡大しており、金持ちと企業に対する人気取り(ばらまき)によって財政を悪化させたのは共和党保守派である。というようなことが指摘されています。
 この本では、日本では、新自由主義的な政策によって、アメリカ以上に労働者の賃金が抑制されているということも指摘されています。輸出依存型大企業の利益を最優先して巨額の資金を投入して円安誘導をし、消費税は増税、法人税だけは減税というアベノミクスと、派遣法について企業側の派遣労働利用期間の制限を全面撤廃して正社員の派遣労働者への切替を促進しながら個別の派遣労働者は3年で切り捨てというこれまでなら考えられないほどあからさまな経営者側のやりたい放題・雇用の不安定化促進の改正が平然と進められているのをはじめ、労働規制の緩和を押し進める現政権の動きを見ていると、この本が指摘する新自由主義の政策による格差拡大はアメリカ以上に日本に当てはまりそうです。


服部茂幸 岩波新書 2013年5月21日発行
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