母親からネグレクトされ家に食べ物がない状態で育ち高校を中退して働き自らもまたシングルマザーとなった21歳の山野珊瑚が、働くために0歳児の娘雪を預けようとして、自宅で赤ちゃん保育を始めようと張り紙をした元修道女くららを訪ねたことから、元の勤務先のパン屋の経営者と従業員、くららと甥の農家とその従業員らの援助を得て、鎮守の杜の廃屋を借りて野菜たっぷりのお総菜カフェの起業をすることになるシングルマザー奮闘小説。
珊瑚の場合、たまたま出会った周囲の人々に恵まれ、多くの人の助けを得て、結果的に信じられないほど順調に進むわけですが、それでもなお明日は客が来なくなるかもしれない、いずれは客が来なくなるかもしれないと考えて不安になり今を際限なく働いてしまうという心理は、同じ零細自営業者として共感するというか身につまされます。
小説としてのポイントは、起業物語よりも、家庭での愛を知らずに疎外されて育った珊瑚が周囲の人から温かい支援を受け、孤独だと思っていたところから良好な人間関係をつくっていく過程、乳児の娘に振り回されながら娘の成長に感動し母子ともに成長していく過程の2つの成長物語にあると思います。絶望的な状況からのスタートで人生を切り開いていく、読んで元気になれそうな作品です。
梨木香歩 角川書店 2012年4月30日発行
珊瑚の場合、たまたま出会った周囲の人々に恵まれ、多くの人の助けを得て、結果的に信じられないほど順調に進むわけですが、それでもなお明日は客が来なくなるかもしれない、いずれは客が来なくなるかもしれないと考えて不安になり今を際限なく働いてしまうという心理は、同じ零細自営業者として共感するというか身につまされます。
小説としてのポイントは、起業物語よりも、家庭での愛を知らずに疎外されて育った珊瑚が周囲の人から温かい支援を受け、孤独だと思っていたところから良好な人間関係をつくっていく過程、乳児の娘に振り回されながら娘の成長に感動し母子ともに成長していく過程の2つの成長物語にあると思います。絶望的な状況からのスタートで人生を切り開いていく、読んで元気になれそうな作品です。
梨木香歩 角川書店 2012年4月30日発行