ワイドショーで話題になるような事件を材料に、巷間言われている俗説(法律都市伝説)の真否、離婚や相続、民事紛争、刑事事件、労働問題の各分野の法律について解説した本。
興味を引きそうなネタを並べて書いているため、体系的網羅的な解説ではなく、これを読んだから法律的な考え方が身につくとは言いがたいものですが、雑学的な満足感は得られそうな本です。
タイトルにマッチした一見違法なものが実は合法とか合法な理由を説明しているという話題はごく僅かで、タイトルはあまり適切とはいえないでしょう。また表紙カバー見返しの項目のうち、「宴会の『裸踊り』はセクハラか?」については、私はその解説を見つけることはできませんでした(185ページで公然わいせつ罪になるかどうかが論じられているだけ)。
家賃不払いの場合に家主側の弁護士から来る内容証明郵便の内容(116ページ)で賃貸借契約の解除が書かれていないのは説明不足といえるでしょうし、「多額の慰謝料が発生するぞ」と書く弁護士はたぶんいないと思います(解除後明け渡しまでも家賃に相当する損害金が発生する、明け渡しの強制執行の費用は敷金から差し引くとかくらいでしょう)。破産公告の説明で雑誌の「官報」を読んでいる人はあまりいません(122ページ)というところまでで話を終えるのは今どきは不親切で、インターネット官報の説明はしておくべきでしょう。ホリエモンの保釈金が数億円に上ったのは「有名人であることも考慮して」(154ページ)ではなく、支払能力を考慮して(逃走を抑止するのに充分な額という発想)でしょう。コンサートでの殺人予告がなされたが実際の犯行はなかった場合の業務妨害罪適用の理屈は「書き込みがあったために警察が警備をせざるを得なくなり警察が本来するべきであった業務が妨害された」(191ページ)ではなく、コンサートの興行主のコンサートの業務が妨害されただと思います。相撲協会の不祥事をめぐる解雇等の処分についての一連の記述(214~218ページ)は、労働法を扱う弁護士の説明としては、八百長問題については業務上の義務違反で解雇が問題となる本来の場面、違法薬物使用と野球賭博は業務外の犯罪で相撲協会の名誉・信用を傷つけたために解雇が正当化されると仕分け整理して論じて欲しいところです。
同業者としてはいくつか気になる点はありますが、楽しみながら法律を知るというか巷間流布される俗説の誤りを知るという目的にはかなった本かなと思います。
間川清 経済界新書 2012年6月7日発行
興味を引きそうなネタを並べて書いているため、体系的網羅的な解説ではなく、これを読んだから法律的な考え方が身につくとは言いがたいものですが、雑学的な満足感は得られそうな本です。
タイトルにマッチした一見違法なものが実は合法とか合法な理由を説明しているという話題はごく僅かで、タイトルはあまり適切とはいえないでしょう。また表紙カバー見返しの項目のうち、「宴会の『裸踊り』はセクハラか?」については、私はその解説を見つけることはできませんでした(185ページで公然わいせつ罪になるかどうかが論じられているだけ)。
家賃不払いの場合に家主側の弁護士から来る内容証明郵便の内容(116ページ)で賃貸借契約の解除が書かれていないのは説明不足といえるでしょうし、「多額の慰謝料が発生するぞ」と書く弁護士はたぶんいないと思います(解除後明け渡しまでも家賃に相当する損害金が発生する、明け渡しの強制執行の費用は敷金から差し引くとかくらいでしょう)。破産公告の説明で雑誌の「官報」を読んでいる人はあまりいません(122ページ)というところまでで話を終えるのは今どきは不親切で、インターネット官報の説明はしておくべきでしょう。ホリエモンの保釈金が数億円に上ったのは「有名人であることも考慮して」(154ページ)ではなく、支払能力を考慮して(逃走を抑止するのに充分な額という発想)でしょう。コンサートでの殺人予告がなされたが実際の犯行はなかった場合の業務妨害罪適用の理屈は「書き込みがあったために警察が警備をせざるを得なくなり警察が本来するべきであった業務が妨害された」(191ページ)ではなく、コンサートの興行主のコンサートの業務が妨害されただと思います。相撲協会の不祥事をめぐる解雇等の処分についての一連の記述(214~218ページ)は、労働法を扱う弁護士の説明としては、八百長問題については業務上の義務違反で解雇が問題となる本来の場面、違法薬物使用と野球賭博は業務外の犯罪で相撲協会の名誉・信用を傷つけたために解雇が正当化されると仕分け整理して論じて欲しいところです。
同業者としてはいくつか気になる点はありますが、楽しみながら法律を知るというか巷間流布される俗説の誤りを知るという目的にはかなった本かなと思います。
間川清 経済界新書 2012年6月7日発行