日本経済新聞連載の「チャートで読む政治」を軸に出版したもの。
この本は「印象に流されがちな政治についてオープンデータを用いながら傾向を読み解き、政治の流れをつかむ試み」(はじめに、5ページ)だそうですが、その「はじめに」では「日本の一部にある空想的な平和主義では現実の危機に対応できない」と断じ(9ページ)、そのすぐ後で「中国の蛮行」という仰々しく感情的な言葉を使っているように、中国の脅威が繰り返し語られます。「日本の輸出入を合わせた貿易総額は中国がトップとなる」(208ページ)とあるように客観的なデータは日本が中国とうまくやっていくことが不可欠であることを示しているというのに、日本経済を重視するはずの新聞社はいつの間にこれほどまでに自民党タカ派におもねり政治的でイデオロギッシュな主張に偏したのでしょうか。
国家公務員の懲戒処分は減少傾向にあり2021年は過去最少となっていることを説明しながら、アンケートでは国家公務員の倫理観が悪くなっていると感じていることについて、「処分される公務員が減ったからといって、国民が公務員に抱く印象がよくなるわけではない。日本の刑法犯は戦後最少にまで減ったものの、世論調査に表れる国民の『体感治安』は改善していないのと似ている」と述べています(196~199ページ)。客観データでは懲戒処分数が減り犯罪数が減っても公務員に対する印象が悪化し体感治安が改善しないのは、マスコミが偏向報道して煽っているから、で、その点で共通しているんだと思います。データに基づいて議論すると言いながらそういうことは完全無視なんですね。日本は他国に比べて政府への信頼度が低いことを紹介する項目(296~299ページ)で、アメリカの会社の調査では政府を信頼していると答えた人の割合は日本は37%、調査対象の11か国で一番低いと書いています(296ページ)。その項目で日本経済新聞社が実施した公的機関への信頼度を尋ねる調査が紹介されているのですが、その調査で『マスコミ』が信頼できるはなんとわずか9%で国会議員の13%よりさらに低かったことが299ページの表からわかります。ところが、本文でも見出しでもそのことにはまったく触れていません(296~299ページ)。新聞社が行った世論調査でマスコミが一番信用できないという結果は衝撃的でかなり重いものだと思うのですが、どんな客観データが出ても自分のことは頬被りですか。
さまざまなデータが紹介されていて、参考になる点も多々あるとは思いますが、こういう姿勢を見せられるとデータの評価には気をつけないとねと思ってしまいます。

日本経済新聞社政治・外交グループ編 日本経済新聞出版 2022年2月7日発行
この本は「印象に流されがちな政治についてオープンデータを用いながら傾向を読み解き、政治の流れをつかむ試み」(はじめに、5ページ)だそうですが、その「はじめに」では「日本の一部にある空想的な平和主義では現実の危機に対応できない」と断じ(9ページ)、そのすぐ後で「中国の蛮行」という仰々しく感情的な言葉を使っているように、中国の脅威が繰り返し語られます。「日本の輸出入を合わせた貿易総額は中国がトップとなる」(208ページ)とあるように客観的なデータは日本が中国とうまくやっていくことが不可欠であることを示しているというのに、日本経済を重視するはずの新聞社はいつの間にこれほどまでに自民党タカ派におもねり政治的でイデオロギッシュな主張に偏したのでしょうか。
国家公務員の懲戒処分は減少傾向にあり2021年は過去最少となっていることを説明しながら、アンケートでは国家公務員の倫理観が悪くなっていると感じていることについて、「処分される公務員が減ったからといって、国民が公務員に抱く印象がよくなるわけではない。日本の刑法犯は戦後最少にまで減ったものの、世論調査に表れる国民の『体感治安』は改善していないのと似ている」と述べています(196~199ページ)。客観データでは懲戒処分数が減り犯罪数が減っても公務員に対する印象が悪化し体感治安が改善しないのは、マスコミが偏向報道して煽っているから、で、その点で共通しているんだと思います。データに基づいて議論すると言いながらそういうことは完全無視なんですね。日本は他国に比べて政府への信頼度が低いことを紹介する項目(296~299ページ)で、アメリカの会社の調査では政府を信頼していると答えた人の割合は日本は37%、調査対象の11か国で一番低いと書いています(296ページ)。その項目で日本経済新聞社が実施した公的機関への信頼度を尋ねる調査が紹介されているのですが、その調査で『マスコミ』が信頼できるはなんとわずか9%で国会議員の13%よりさらに低かったことが299ページの表からわかります。ところが、本文でも見出しでもそのことにはまったく触れていません(296~299ページ)。新聞社が行った世論調査でマスコミが一番信用できないという結果は衝撃的でかなり重いものだと思うのですが、どんな客観データが出ても自分のことは頬被りですか。
さまざまなデータが紹介されていて、参考になる点も多々あるとは思いますが、こういう姿勢を見せられるとデータの評価には気をつけないとねと思ってしまいます。

日本経済新聞社政治・外交グループ編 日本経済新聞出版 2022年2月7日発行