伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

枳殻家の末娘

2022-04-14 22:36:16 | 小説
 1年前に死んだ若者たちの心をつかんだロック歌手小諸初とセックスしていた17歳の女「キリコ」を、妹を殺した人物を殺害した過去のあるムショ帰りの中年ライター小暮京一郎がインタビューして手記を書くという設定の官能小説。
 京一郎とキリコの会話というか掛け合いで進む冒頭から第4章1まで(99ページまで)とキリコのひとり語りの形式になる第4章2から第7章まで(233ページまで)、京一郎視点の形式に戻る第8章以降で印象が大きく違います。キリコひとり語りの部分は、17歳の女性の語りとは思いにくく、文体も乱れ、官能小説としてみても、ふつうの小説としてみても入りにくく退屈な感じがします。このあたりはなんか、雑な仕事っぽい。ここは中年男が話を聞いて手記にまとめたから語りとして今ひとつでおじさんぽさが出るという趣向であえてこういう文章にしてるというつもりかもしれないけど、そうとしても滑ってるように私には思えます。ふつうの小説としても、官能小説としても、読みどころは第4章1までと第9章以降でしょうね。
 作者が2021年8月に亡くなったのを見て、1993年の28年も前のスポーツ紙連載を急遽単行本として出版というのは、「まこと素晴らしき英断」(西村賢太の寄稿文:339ページ)なのか、出版社の商魂たくましさなのか…


高橋三千綱 青志社 2022年1月26日発行
サンケイスポーツ連載
コメント
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