劇作家兼演出家の破月悠高が主催していた学生劇団NTRで女優として活躍し、当時高い評価を得た「マノン・レスコー」で主役を演じ、多数の劇団関係者と次々関係を持ち去って行った「いい顔で笑う子」のバイセクシュアルのヒカリについて、十数年が経った今、2年前に死んだ破月悠高が残した戯曲にこと寄せるかたちで他の元劇団員たちが、今はどこでどうしているかわからないヒカリとの想い出、ヒカリへの追憶・賛歌を記した文集という形式の連作小説。
寄稿者それぞれが、バイセクシュアルのヒカリと性的な関係を持ち、それが劇団の狭く濃密な人間関係の下で残した嫉妬、羨望、軋轢、諦念を今となっては甘酸っぱい想い出化して語る様子が、また複数の者からの語りを合わせることで事実にも人物にも別の側面が次第に見えてくるところが、読みどころとなっています。
レズビアンの雪美と劇団の看板男優の裕がそれぞれにヒカリと関係を持ち、その間・その後に2人の間に生じる友だち以上恋人未満的な関係など、ほろ苦くも甘酸っぱくもある様々な人間関係に、魅力を感じますが、それもヒカリ不在の状況だからともいえ、ヒカリがそこに現れた場合には緊張が走ることになるでしょう。そういうことを考えると、ヒカリが行方不明という設定は巧妙なものと言えましょう。
松浦理英子 講談社 2022年2月22日発行
「群像」連載
寄稿者それぞれが、バイセクシュアルのヒカリと性的な関係を持ち、それが劇団の狭く濃密な人間関係の下で残した嫉妬、羨望、軋轢、諦念を今となっては甘酸っぱい想い出化して語る様子が、また複数の者からの語りを合わせることで事実にも人物にも別の側面が次第に見えてくるところが、読みどころとなっています。
レズビアンの雪美と劇団の看板男優の裕がそれぞれにヒカリと関係を持ち、その間・その後に2人の間に生じる友だち以上恋人未満的な関係など、ほろ苦くも甘酸っぱくもある様々な人間関係に、魅力を感じますが、それもヒカリ不在の状況だからともいえ、ヒカリがそこに現れた場合には緊張が走ることになるでしょう。そういうことを考えると、ヒカリが行方不明という設定は巧妙なものと言えましょう。
松浦理英子 講談社 2022年2月22日発行
「群像」連載