銀行の融資担当者が融資や条件変更、債権回収などの際に考慮すべき法律等について解説した本。
あくまでも銀行の側から、銀行にとってのリスクや法的手段等を説明したものですが、借り手側から見て参考になる情報もあります。法令ではないものの日商(日本商工会議所)と全銀協(一般社団法人全国銀行協会)が事務局を務める経営者保証に関するガイドライン研究会発表の「経営者保証に関するガイドライン」が中小企業が破産等の法的手続または準則型私的整理手続(再生支援スキーム、事業再生ADR等)を行っていいる場合の経営者である個人保証人について「華美でない自宅」と一定期間の生活費に相当する現預金(経営者が45歳以上60歳未満の場合462万円、60歳以上の場合363万円がめやす)等を手元に残せる(220~223ページ)とか。もっと実際の運用について詳しく教えてくれるといいのですが。銀行が不良債権回収の段階に入った場合、利息より先に元本に充当する(実際には「不良債権」になったら系列の保証会社に代位弁済させて銀行の手を離れるので、あまり意味はないですけど)のは、債務者/借主のためじゃなくて「そのほうが不良債権を減少できるからです」(245ページ)って。なるほどです。
著者はみずほ銀行に長年(興銀時代と通算して24年)勤務していたとのことですが、融資先に法令違反があるときの例として「利息制限法に違反する高利の貸付を行っている消費者金融業者へのバックファイナンス」を挙げた上で「法令違反が絡む投資へのバックファイナンスとして融資をしてはいけません」と述べています(27ページ)。少なくともみずほ銀行の支援を受け今はみずほフィナンシャルグループ企業となっているオリコが「利息制限法に違反する高利の貸付を行っている消費者金融業者」であったことは言い逃れの余地はないと思いますが(まさか、オリコは「信販会社」だから「消費者金融」ではない、とか言いませんよね。いくら何でも)、そこは「よく言った」と評価しておきましょう。
離婚の際の住宅ローンへの対応について、居住する方の収入で返済が無理な場合は、夫婦間の協議結果に関わりなく銀行としてはローンの組み替えはもちろんのことローン支払いの継続にも応じないで売却をすすめるとしています(190~192ページ)。事業者でない個人には徹底して回収優先の冷酷な姿勢ですね。銀行の本音が見えます。
弁護士の書いたものとしては、期限の利益の喪失について「銀行が期限の利益を喪失する」「銀行が期限の利益を喪失した」という表現が出てきたり(例えば100~101ページ)(銀行は借主の期限の利益を「喪失させる」のが通例ですし、もし銀行側の期限の利益についてなら「放棄する」が通例)、「分割会社に対し債務の履行をできる債権者」(183ページ)(「債務の履行を請求できる」か「分割会社から債務の履行を受けられる」だと思いますよ。常識的には)とか、意味わかってる?って疑問に思う表現が見られます。他人に/素人のライターに書かせて弁護士が「監修」してるのなら見落としかな(それでもこういうの見落とすかな)と思いますが、弁護士が自分で書いてこういう言葉使うか?と思いました。
池田聡 日本実業出版社 2022年3月20日発行
あくまでも銀行の側から、銀行にとってのリスクや法的手段等を説明したものですが、借り手側から見て参考になる情報もあります。法令ではないものの日商(日本商工会議所)と全銀協(一般社団法人全国銀行協会)が事務局を務める経営者保証に関するガイドライン研究会発表の「経営者保証に関するガイドライン」が中小企業が破産等の法的手続または準則型私的整理手続(再生支援スキーム、事業再生ADR等)を行っていいる場合の経営者である個人保証人について「華美でない自宅」と一定期間の生活費に相当する現預金(経営者が45歳以上60歳未満の場合462万円、60歳以上の場合363万円がめやす)等を手元に残せる(220~223ページ)とか。もっと実際の運用について詳しく教えてくれるといいのですが。銀行が不良債権回収の段階に入った場合、利息より先に元本に充当する(実際には「不良債権」になったら系列の保証会社に代位弁済させて銀行の手を離れるので、あまり意味はないですけど)のは、債務者/借主のためじゃなくて「そのほうが不良債権を減少できるからです」(245ページ)って。なるほどです。
著者はみずほ銀行に長年(興銀時代と通算して24年)勤務していたとのことですが、融資先に法令違反があるときの例として「利息制限法に違反する高利の貸付を行っている消費者金融業者へのバックファイナンス」を挙げた上で「法令違反が絡む投資へのバックファイナンスとして融資をしてはいけません」と述べています(27ページ)。少なくともみずほ銀行の支援を受け今はみずほフィナンシャルグループ企業となっているオリコが「利息制限法に違反する高利の貸付を行っている消費者金融業者」であったことは言い逃れの余地はないと思いますが(まさか、オリコは「信販会社」だから「消費者金融」ではない、とか言いませんよね。いくら何でも)、そこは「よく言った」と評価しておきましょう。
離婚の際の住宅ローンへの対応について、居住する方の収入で返済が無理な場合は、夫婦間の協議結果に関わりなく銀行としてはローンの組み替えはもちろんのことローン支払いの継続にも応じないで売却をすすめるとしています(190~192ページ)。事業者でない個人には徹底して回収優先の冷酷な姿勢ですね。銀行の本音が見えます。
弁護士の書いたものとしては、期限の利益の喪失について「銀行が期限の利益を喪失する」「銀行が期限の利益を喪失した」という表現が出てきたり(例えば100~101ページ)(銀行は借主の期限の利益を「喪失させる」のが通例ですし、もし銀行側の期限の利益についてなら「放棄する」が通例)、「分割会社に対し債務の履行をできる債権者」(183ページ)(「債務の履行を請求できる」か「分割会社から債務の履行を受けられる」だと思いますよ。常識的には)とか、意味わかってる?って疑問に思う表現が見られます。他人に/素人のライターに書かせて弁護士が「監修」してるのなら見落としかな(それでもこういうの見落とすかな)と思いますが、弁護士が自分で書いてこういう言葉使うか?と思いました。
池田聡 日本実業出版社 2022年3月20日発行