都心から電車で1時間くらいの温泉がある観光地で、美味しいパンを作るパン屋ワタナベベーカリーを営む父渡辺洋介の背を見て育った三姉妹の長女渡辺展子が、自分は一生懸命やっているのに思うように結果を出せないと苦しみながら生き過ごしてきた半生を語るスタイルの小説。
展子の自分はこんなに頑張っているのにという思いが周囲への目配りを欠き展子が力んで空回りする様子が描かれ続けますが、この作品では展子は現実に頑張っているだけに、なかなか切ないところがあります。周囲の人が自分と同じようにできると思って自分の尺度で評価し断罪してはいけない(その人ができる面を見つけてそれを評価すべき)というのは、言うは易しですが…やはり肝に銘じておくべきでしょう。
序盤で中学高校時代に際立つ美人の渡辺久美と親友として付き合い、周囲の男たちが美人の渡辺久美にラブレターを渡して欲しいと言ってくるのに呆れ、自分が好きだった山本徹までが久美にしか興味を持たない様を見せつけられて、久美を羨み美人に生まれなかったことを不満に思う展子が、意外にも久美との友情を育み続け、久美は久美で思うに任せぬ人生を歩みながら展子とはまた違った強さを示すという展開に、味わいがあります。
展子が母を交通事故で失い、中学生以降父子家庭であったためとは思いますが、パパッ子で中学生でも高校生でもそして40代になってさえ父を慕い敬い続ける様子が、娘を持つ身には羨ましく思え、好感度大でした。
桂望実 幻冬舎 2019年2月5日発行
展子の自分はこんなに頑張っているのにという思いが周囲への目配りを欠き展子が力んで空回りする様子が描かれ続けますが、この作品では展子は現実に頑張っているだけに、なかなか切ないところがあります。周囲の人が自分と同じようにできると思って自分の尺度で評価し断罪してはいけない(その人ができる面を見つけてそれを評価すべき)というのは、言うは易しですが…やはり肝に銘じておくべきでしょう。
序盤で中学高校時代に際立つ美人の渡辺久美と親友として付き合い、周囲の男たちが美人の渡辺久美にラブレターを渡して欲しいと言ってくるのに呆れ、自分が好きだった山本徹までが久美にしか興味を持たない様を見せつけられて、久美を羨み美人に生まれなかったことを不満に思う展子が、意外にも久美との友情を育み続け、久美は久美で思うに任せぬ人生を歩みながら展子とはまた違った強さを示すという展開に、味わいがあります。
展子が母を交通事故で失い、中学生以降父子家庭であったためとは思いますが、パパッ子で中学生でも高校生でもそして40代になってさえ父を慕い敬い続ける様子が、娘を持つ身には羨ましく思え、好感度大でした。
桂望実 幻冬舎 2019年2月5日発行