伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

タコのはなし その意外な素顔

2023-02-20 22:42:38 | 自然科学・工学系
 タコの生態等についての解説書。
 タコについての研究は進んでおらず、著者自身も元々の研究対象はイカであったが同じ頭足類として興味を持ち、イカ以上に研究者が少なく研究の必要性を感じて研究するようになったと書いています(まえがき、あとがき)。
 タコは海中で生活しておりその自然界での観察が容易でないこと、250種ほどのタコがいるのに、研究の中心は欧米の学者により主としてチチュウカイマダコ(マダコは世界中に分布していてすべて同一種と考えられていたが、日本のマダコはマダコの標本種とは別種と判明したのだそうな:31~32ページ)について行われてきたため、これまでに研究で明らかになったことやタコの特性と考えられてきたこと、例えば視覚の発達、学習能力、触覚の機能、単独性等が多くのタコに共通するものなのかについても再検討の必要性があるとのことです。
 著者は、タコの社会性/単独性について、さまざまな実験・研究を示し、タコが必ずしも他のタコと別行動をしたり他のタコを排斥しようとしない場面を挙げつつ、それが種の特性によるのか、実験環境の特性によるのかなど、まだ判断できずにいることを述べています。アメリカで通常は同種同士の接近行動が観測されないカリフォルニアツースポットタコにMDMA(いわゆるエクスタシー)を投与すると近隣の同種他個体に腕を伸ばして触ろうとする行動が見られた(151~152ページ)などという先進的な/ラディカルな実験結果も紹介されています。全体としては、身近に思われるタコについてもその生態等はほとんどわかっていないということを再認識するという本だと思います。


池田譲 成山堂書店 2022年11月18日発行
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