伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

英語談話標識の姿 ちょっとまじめに英語を学ぶシリーズ5

2023-02-19 20:35:33 | 実用書・ビジネス書
 英語表現で、話し手が聞き手に対して自分の発話の内容・趣旨を正しく理解するように、文脈に応じて話し手の態度表明、感情表出、情報価値、談話構造、対人関係等に聞き手の意識を向けさせる合図と位置づけられる「談話標識」、多用される言い回しとしては、actually、after all、all right、also、anyway、at least、by the way、frankly、furthermore、however、I mean、in addition、incidentally、in conclusion、in fact、in other words、kind of、look、mind you、nevertheless、now、of course、OK、on the contrary、on the other hand、so、sort of、still、then、therefore、well、you know等(5ページの例示)などの使い方とそのニュアンス等について解説し論じた本。
 学者による研究という体裁ですが、言葉、それも現代の口語表現のことですので、それほどきちんと整理しきれるものではなく、どちらかと言えば、こういう使い方もある、同じ言葉でもいろいろなニュアンスを込められるということを例文を読みながら感じ取るというか、ふ~ん、そういう表現があるんだねと感心するという本だと思います。
 例文は現代小説と映画が多く、体感的には小説ではシドニー・シェルダンとエリック・シーガルが多く、映画では「プラダを着た悪魔」が多く引用されているように思えました。私の好みとしては、ジョン・グリシャムがわりとあって、あぁこの場面かなと思えるのが楽しく、そういう点ではハリー・ポッターシリーズからの例文がまったくないのが残念でした。
 ところで、同じ例文が複数回引用されているのに、違っているのはどうよと思いました。同じ引用文中の「~was, well, a story」が26ページでは「1つの作り話だ」と訳され、126ページでは「1つの物語になっている」と訳されています。話されている文脈のなかでの微妙なニュアンスを検討する本で、その前提となる文脈・文意の理解にズレがあるとしたら、その検討が適切か不安を感じます。同じ引用文の英文が、56ページでは「 " I must (略)as you know well.」で、164ページでは「"Yes, I must(略)as you well know.」とされています。原典からの引用が、少なくともどちらかは間違いなわけで、原典のチェックがその程度となると、他の部分の引用の精度にも疑いが生じます。例文自体が正しくなかったら、その中での「談話標識」のニュアンスの解釈にも影響しかねません。私が発見したのはごくわずかな箇所ではありますが、ちょっと大丈夫かと思ってしまいます。


廣瀬浩三、松尾文子、西川眞由美 ひつじ書房 2022年11月25日発行
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