goo blog サービス終了のお知らせ 

伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

KAROSHI 過労死 過重労働・ハラスメントによる人間破壊

2023-02-06 22:08:37 | 人文・社会科学系
 過労死についての事例報告と関連論文からなる過労死についての啓発書。
 過労死・過労自殺の事件は、事例として個別性が強くまた通常長期の時系列があってのことなので、なかなか事例の紹介、読む側で言えば事例の把握に労力がかかり、判例雑誌等に掲載された判決を読むときもかなりの長文であることから少し力を入れてと言うか覚悟して読み始める必要があります。そういうことからして、たくさんの事例を紹介するのは難しいのですが、過労死弁護団の著作ということからはもう少し多数の事例を読みたかったなぁと思います。
 その点、代表の川人弁護士の論文の中で、「現在においても、個別事案解決文書作成にあたって会社が事件に関する守秘条項の導入を強く主張し、事件が公にされないことがしばしばあり」(81ページ)としていることが目を引きました。まぁ個別事件の解決という観点からは当然のことと言えますが、多数の事件で記者会見を開き公表している印象からつい見逃しがちなところです。
 2021年5月に公表されたWHOとILOの共同論文で、2016年には世界全体で推定74万5194人が長時間労働(週55時間以上の労働)による虚血性心疾患と脳卒中で死亡したとされていると紹介されています(86~87ページ、100~101ページ)。週55時間以上の労働というのは、概ね月65時間以上の時間外労働を意味しています。それによってそんなにも多くの人が過労死している/するのだとすると本当にたいへんなことで、驚きました。論文は公開されている(こちらのページでダウンロードできます)のですが、英語なので読む意欲が湧きません。どこかに和訳がないものかと思うのですが。


過労死弁護団全国連絡会編 旬報社 2022年12月1日発行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする