学生運動を知らない世代1992年生まれ30歳の週刊誌記者である著者が、50年前の山岳ベースリンチ殺人事件(連合赤軍事件)の中心人物であった森恒夫の足跡をたどるというノンフィクション。
本の装丁からは小説かと思いましたが、週刊誌記者らしく、現地を訪ね(ただし、50年前のことであることと、事件記録ではなく出版物や手記類を頼りにしていることから、現地を正確には特定できずに終わっている)、関係者にインタビューして(やはり50年前のこと故、事実についての言及はあいまい)、手探りで森恒夫の経歴、人柄や性向を描き出し、事件当時の考えや心情を推測していくスタイルのノンフィクションとなっています。
描かれている理論的ではあるが人を引っ張っていくタイプではなく責任感はある体育会系というような森恒夫像は、事件関係者の間ではもともとそのように受け止められていた(事件記録を読んだ私もそのような印象を持っていた)ものですが、世間というか、否定的に描きたいマスコミによって異常性あるいは未熟さ(あるいは「狂気」)が強調されてきたなかで、若い記者が取材により描いたという点で新たな価値があるのでしょう。

佐賀旭 集英社 2022年11月30日発行
2022年開高健ノンフィクション賞受賞作
本の装丁からは小説かと思いましたが、週刊誌記者らしく、現地を訪ね(ただし、50年前のことであることと、事件記録ではなく出版物や手記類を頼りにしていることから、現地を正確には特定できずに終わっている)、関係者にインタビューして(やはり50年前のこと故、事実についての言及はあいまい)、手探りで森恒夫の経歴、人柄や性向を描き出し、事件当時の考えや心情を推測していくスタイルのノンフィクションとなっています。
描かれている理論的ではあるが人を引っ張っていくタイプではなく責任感はある体育会系というような森恒夫像は、事件関係者の間ではもともとそのように受け止められていた(事件記録を読んだ私もそのような印象を持っていた)ものですが、世間というか、否定的に描きたいマスコミによって異常性あるいは未熟さ(あるいは「狂気」)が強調されてきたなかで、若い記者が取材により描いたという点で新たな価値があるのでしょう。

佐賀旭 集英社 2022年11月30日発行
2022年開高健ノンフィクション賞受賞作