当事者対等を前提として契約関係等を規律する民法に対して、事業者・企業等との間で知識や情報収集力・交渉力等で圧倒的に弱い消費者の契約関係や商品・サービス利用における安全性の点で消費者を保護する一連の法体系について解説した本。
消費者法の分野は、労働法と並んで、当事者の力関係に差があることを理由として民法原理を修正する必要があるもので、庶民の弁護士としてはよく知り使いこなさなければならないものですが、新規立法や法改正が頻繁にあり、付いていくのがたいへんな分野でもあります。久しぶりに領域横断的な本を読んで、知らなかった法改正が多数あることを知り、勉強になるとともにちょっと冷や汗でした。
それにしても、当事者対等、自己責任を基本原理とする民法を修正する必要があるから制定整備されている消費者法の分野でも、自立支援なる概念が導入され、電子取引の進展から世間的には納得されやすいにしても特定商取引法の各種の書面交付義務が「電磁的方法」(電子メール等)でよいこととされていく(2021年改正法:施行は2023年6月15日を超えない範囲で政令で定める日、現時点で未定)などは、事業者側の便宜を優先して消費者保護を後退させるもので、嘆かわしいところです。
5人の分担執筆ということから、その自立支援を好ましく評価したり、判断力が弱い者に投機的取引などのリスクの高い取引を勧誘することを違法とする適合性原則の強化を顧客の自己決定の機会を奪い取引から排除するものとする評価をする者とそれと反対の価値観を持つ者の論調の違いを感じます。まぁそれはそれで興味深く読めますけど。

宮下修一、寺川永、松田貴文、牧佐智代、カライスコス・アントニオス 有斐閣ストゥディア 2022年11月10日発行
消費者法の分野は、労働法と並んで、当事者の力関係に差があることを理由として民法原理を修正する必要があるもので、庶民の弁護士としてはよく知り使いこなさなければならないものですが、新規立法や法改正が頻繁にあり、付いていくのがたいへんな分野でもあります。久しぶりに領域横断的な本を読んで、知らなかった法改正が多数あることを知り、勉強になるとともにちょっと冷や汗でした。
それにしても、当事者対等、自己責任を基本原理とする民法を修正する必要があるから制定整備されている消費者法の分野でも、自立支援なる概念が導入され、電子取引の進展から世間的には納得されやすいにしても特定商取引法の各種の書面交付義務が「電磁的方法」(電子メール等)でよいこととされていく(2021年改正法:施行は2023年6月15日を超えない範囲で政令で定める日、現時点で未定)などは、事業者側の便宜を優先して消費者保護を後退させるもので、嘆かわしいところです。
5人の分担執筆ということから、その自立支援を好ましく評価したり、判断力が弱い者に投機的取引などのリスクの高い取引を勧誘することを違法とする適合性原則の強化を顧客の自己決定の機会を奪い取引から排除するものとする評価をする者とそれと反対の価値観を持つ者の論調の違いを感じます。まぁそれはそれで興味深く読めますけど。

宮下修一、寺川永、松田貴文、牧佐智代、カライスコス・アントニオス 有斐閣ストゥディア 2022年11月10日発行