伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

小鳥たちの見たもの

2007-02-11 17:36:45 | 小説
 母親の精神病のために母親から引き離され、父親からも見捨てられて祖母に育てられる臆病者で人見知りの9歳の少年エイドリアンが、近くの町での3人の子どもの失踪事件、裏の空き家に引っ越してきた3人の子ども、学校でのいじめや仲間はずれといった事件にあいながら思い悩み、裏に越してきた孤独な少女ニコルとともに冬の夜のプールに忍び込み事故にあうという設定の小説。
 親に見放され、祖母も今さらの子育てを苦痛に思う様子を盗み聞きしたり、学校では浮いてしまうことが嫌なばかりにいじめられっ子が屋上に上り「飛び降りてやる」というのに対してみんなと共に「飛べ」と囃し立て、いじわるな優等生に親友を奪われ、とエイドリアンの立場で描かれる心象風景は切ない。
 ストーリーの冒頭に展開している3人の子どもの失踪事件にも、エイドリアンの置かれた事態にも、積極的な打開策はなく、最後にエイドリアンが決断する家出も、エイドリアン自身、本気でもないし挫折することを見込んでいます。それが最後にニコルが突っ走るのについて行き、積極的な行動に出ますが、その結果は、現世での解決には導かれません。夢のような解決を示されても現実感がないでしょうけど、何か前向きの行動がなされてもよさそうに思えます。最後まで切なさだけを感じる作品でした。
 冒頭の時代設定、1977年についていろいろに位置づけた設定が、物語にどういう意味を持つのか、最後まで読んでもまるでわかりませんでした。


原題:OF A BOY
ソーニャ・ハートネット 訳:金原瑞人、田中亜希子
河出書房新社 2006年12月30日発行 (原書は2002年)
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Q&Aケータイの法律問題

2007-02-11 09:13:43 | 人文・社会科学系
 携帯電話に関する法律問題についてのQ&A形式の解説書。
 法律問題ということで書いていますが、その前提として技術的なことにも少し触れてあって、そっちの方でも勉強になりましたが。電磁波の安全性のところなんていかにも役人的な安全強調が気になりましたけど。
 法律論でも多数の執筆者で書いているので方向性も様々。「デジタル万引き」(カメラでの書籍撮影)目的での書店への立入が「住居侵入罪が成立することも十分考えられます」(165頁)なんて、警察は喜ぶかもしれないけど極端な治安重視の主張がなされているのは、ちょっとビックリ。
 携帯電話の利用関係で規制が強化されているせいもあって、全体的に規制当局寄りの、利用者を戒める内容が目立つ感じ。
 文章は、やっぱり法律業界用語が多く、携帯電話を「ケータイ」と表記している点以外は、関心のある一般人が読むにはちょっと苦しい。「関連業務に従事している方々」向けなんでしょうね。


根田正樹、町村泰貴編著 弘文堂 2007年1月15日発行
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フロリダウォルト・ディズニー・ワールド完全ガイド

2007-02-10 12:29:48 | 趣味の本・暇つぶし本
 フロリダの本家ディズニーワールドのガイドブック。
 行く気じゃないのでまじめには読みませんが、クリスマスから正月にかけては東京ディズニーランド以上の混雑だけど10月から11月はすいてるそうです。結婚式ツァーもあって、お好きなキャラクターのリクエスト可とか、やっぱり商売してますね。
 激安チケット購入の裏技で、オーランドの不動産会社が販売している物件を午前中に見るという条件で正規料金の4分の1~5分の1で買える(32頁)って、旅行者に不動産見せてどうするんでしょ。リタイヤ後にフロリダ永住を考える人を増やす投資でしょうか。
 アトラクションの説明を日本語で行う翻訳機(保証金のみで無料貸与:74頁)とかあるそうで、日本人入園者も経営の柱になっているんでしょうね。


TDR DE GO情報局 双葉社 2006年12月25日発行
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トレイシー・ローズ

2007-02-10 01:29:15 | ノンフィクション
 年齢を偽って15歳でポルノ女優としてデビューし児童虐待の被害者としてFBIに保護された著名ポルノ女優の自伝。
 FBIに保護されるまでを描いた前半は、まあおきまりの、家庭崩壊、デートレイプ、ドラッグ漬けといった凄まじい経験が並んでいます。後半は、その後も過去に対する好奇の目・非難の目を受けながらいかに立ち直り女優・歌手として成功したかというお話。トレイシー・ローズってポルノ女優としてしか名前を聞いたことなかったんですが、歌手としてヒットを飛ばしていたんですね。知りませんでした。でも、どうもその後半は今ひとつエピソードが羅列されているだけって感じで、色々あったのねとは思えるけど、まとまりがない。どうやって立ち直ったかということをまとめる視点がないせいか、うまくいったという話自体がおもしろくないのか、後半は読んでいて退屈しました。


原題:TRACI LORDS : UNDERNEATH IT ALL
トレイシー・ローズ 訳:野澤敦子
WAVE出版 2005年4月10日発行 (原書は2003年)
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「アンアン」1970

2007-02-10 01:25:57 | ノンフィクション
 雑誌「アンアン」創刊当時の舞台裏のドタバタを書いた本。
 初めての全ページグラビア誌のため販売純益ゼロ(全部売れても)の上に返本率40%という評判は取っても売れない雑誌だったというのは、その後の躍進の印象からはちょっと意外。
 おきまりの創刊号のギリギリのドタバタの話や、取材の苦労の話の他に、1970年代前半の世情やなつかしい話もあり、70年代に青春を送った世代には、いろいろと興味深いところがあるかと思います。


赤木洋一 平凡社新書 2007年1月11日発行
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ザンジバルの笛

2007-02-08 22:10:47 | 人文・社会科学系
 東アフリカの小さな(といっても佐渡島の2倍くらいの)島ザンジバルの文化と歴史を解説した本。
 ザンジバルは今はタンザニアの一部に過ぎないけれど、インド洋の海洋貿易の盛んな時代は、ザンジバルの王や商人が東アフリカ一帯のスワヒリ文化圏、内陸のタンガニーカ湖のさらに西側までを支配していたそうです。
 ザンジバルの王族は遠くペルシャのシーラーズから渡ってきたとか、インドの商人と貿易が盛んだったとか、19世紀にはオマーン(アラビア半島の北東部)の王族がザンジバルを支配し、ストーン・タウン(世界遺産指定済だそうです)を建設したとか、ロマンを感じさせる話が紹介されています。そのような歴史から、住民にアラブ系、インド系、アフリカ系が入り交じり、盛んだったクローブ農園の利権をめぐって対立したりして、政治的には難しいみたいですけど。そのあたりの著者の専門の現代史部分はちょっと小難しいですが、海洋貿易盛んな頃の話や風土・文化の紹介が魅力的です。
 タイトルに使われ、はじめにで取りあげている「ザンジバルで笛ふけば、湖水の人びとが踊りだす」の俗謡のなぞが、最後まで読んでも解明されないのはちょっと不満が残りましたけど。


富永智津子 未来社 2001年4月20日発行
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天と地の守り人 第2部

2007-02-07 01:24:13 | 物語・ファンタジー・SF
 南の大陸の大国タルシュ帝国の大軍の侵略に脅かされる新ヨゴ皇国の皇太子チャグムと女用心棒のバルサが、タルシュ帝国に対抗するためにロタ王国とカンバル王国の同盟を説得するため、ロタ王国からカンバル王国に向かい、タルシュ帝国の刺客やカンバル王国幹部の裏切りに危機に会いつつカンバル王を説得するまでを描いたファンタジー。
 カンバル王国の牧童たち、ロタ王国の王族と「猟犬」カシャルたち、新ヨゴ皇国で徴兵された草兵たち、タルシュ帝国の幹部たち、カンバル王国の幹部「王の槍」たちの視点で立体的に描かれていますが、皇太子チャグムを中心に置き、国家間の折衝・思惑で展開するため、精霊の守り人など初期のシリーズで感じられた民・被差別民の視点が薄まっています。プロットの展開としてはファンタジーとして純化しておもしろいとはいえますが。
 敵を強大に設定している上にバルサの衰えを1つのモチーフにしているので、これまでにもましてバルサが傷だらけになり、読んでいて切ないというか痛々しい。ちょっとしか出てこない草兵として徴用されたタンダもこき使われて可哀想だし、ここまでいじめたら、最後はバルサとタンダは結ばれるハッピーエンドにしてあげて欲しいなあと、しみじみと思ってしまいます。(最初のシリーズから読んでないとわかりにくいですね。すみません)


上橋菜穂子 偕成社 2007年2月発行
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交渉力

2007-02-06 09:22:15 | 実用書・ビジネス書
 プロ野球選手のエージェントで有名な(日本のマスコミでは悪名高い)著者による球団との交渉経験を元に、交渉を論じるという形で、むしろ日本のプロ野球の問題を論じている本。
 交渉に当たって複数のプランを用意する、誇張はしても嘘はつかない(交渉のベースは信頼関係)、事前調査(市場調査)の重要性、怒るときでも冷静に等は、交渉を業務としている身には、1つ1つ頷ける話。
 著者が最初に強調している、交渉の本質はお互いが納得しあうことにある、納得は妥協(折り合いを付ける)とは違うということ(8~12頁)は、考えさせられます。著者の言うように、日本人はWin-Winの交渉が下手で、ゼロサム原理の下に交渉は一方が勝てばその分相手が負けたという態度で臨みがちです。アメリカ人が書くものはたいていWin-Winを目指すべきとされているのですが。日頃交渉している身としては、でも言うは安く行うは・・・。


団野村 角川Oneテーマ21 2007年1月10日発行
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スクール オブ デザイン

2007-02-05 08:11:13 | 実用書・ビジネス書
 職業としてのデザインについての格言的なアドヴァイスとか心得的なことをグラフィックデザインと見開きで並べた本。
 プロとしての自覚を求めて「デザインで夢を与えていますか?」(148頁)とか、本当は嫌だと感じながら「楽しい」と自分に言い聞かせるより嫌なことは嫌だと思い続けた方がいい、嫌だから早く終わらせたいと考えた方がいい(316頁)とか、締切は味方(188頁)とか、フリーだと誰もダメ出ししてくれない(186頁)とか、自営業者としてはいろいろと思うところのある言葉が並んでいます。
 ただ、4人の分担があるんでしょうけど、諦めというか長い物には巻かれろ的なものもあって、客商売としてはそういう面も当然あるわけですが、今ひとつ気持ちよくない。付いているグラフィックもなんか私にはピンと来ないし。
 全部英訳が付いていますけど、日本語を先に作って英訳しているので、なんとなくこなれてない感じ。何のために英文を付けているのかもわかりません。


古平正義、平林奈緒美、水野学、山田英二
誠文堂新光社 2006年9月20日発行
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YouTube革命

2007-02-04 16:10:38 | ノンフィクション
 動画共有サイトの勝ち組YouTubeの紹介本。テレビや著作権管理団体との確執、YouTubeと提携・利用を選択するメディアの戦略等を論じています。
 これだけコンテンツが増えると、自分の興味で検索してヒットする映像でなければ見ていられないというネットの現状からすると、検索機能の付いた動画共有サイトが人気沸騰するのは、当然のこと。テレビ局の都合で決められた時間にテレビ局が見せたいものにつきあっているほど暇じゃないし、今時のテレビの「情報番組」の信頼度なんてインターネットの有象無象の情報と大差ないことがわかってきましたし・・・。
 ただ著者が指摘するように、日本のユーザーの投稿には窮地にある人や何らかのミステイクを犯した人をさらし者にしたり揶揄したりするようなコンテンツが少なくない(91頁)のは残念。マスコミが取りあげてくれない企業の不正の告発に利用された例(58~59頁)とか、そういう利用が増えるとすごくいいと思うんですが。


神田敏晶 ソフトバンク新書 2006年12月26日発行
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