伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

英詩のわかり方

2007-05-04 08:18:05 | 人文・社会科学系
 英米の詩の読み方についての本。内容的には、大学の英文学の教科書という感じ。
 イギリスのファンタジーとか小説を読んでいるとよく出てくる詩人、ワーズワースとかホイットマンとかイエイツとかエリオットの詩が紹介されているのがちょっとお得感がありました。シェークスピアのソネットが3つ出てくるのも、ダン・シモンズ(オリュンポス)をこれから読む身にはよさそう。
 どちらかというと詩の解説よりも、冒頭の「いま読んでぴんと来ないものはあとに回せ」(5頁)というアドヴァイスが納得したりして。
 そこで語られている日本語と英語の違い、そのために翻訳で失われるニュアンスの説明がおもしろく読めました。例えば日本語が繰り返しを避け、語尾を言い換えていく(小林秀雄の文章を例に語尾をいじるだけで文章の説得力が大きく変わると指摘する9~11頁は注目)のに対して英語は繰り返しが多用されるので、日本語で敢えて繰り返しを多用して独特のニュアンスを出している詩が英訳されると平凡になり、英語の詩を日本語訳するとくどく過剰なニュアンスになるということが指摘されています。また1人称が日本語では様々なニュアンスの言葉があり省略されがちなのに、英語では中性的な「I」だけで省略されないので、翻訳で詩のニュアンスがかなり変わるということも指摘されています。だから英語の詩の原典を読もうという気にはとてもなれませんでしたが、少し勉強した感じにはなれます。


阿部公彦 研究社 2007年3月23日発行
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さよならを言うことは

2007-05-03 07:35:29 | 小説
 エリート警察官の兄の妻となった女性のふるまいに不審を感じた妹が、兄嫁の素性を調査するうちにハリウッドの裏側やそれに絡む売春グループなどにたどり着き、その中で起こった殺人事件や兄嫁に唆されて道を踏み外そうとする兄に迫るという構想のミステリー。
 ミステリーとしては、あまり劇的な展開とは言えず、誰が悪いのかもおおかた見えますし、最後の方では主人公がどうやって兄を救うかぐらいしか興味を持てませんでした。主人公が裏社会に潜入して行く場面もあまり危険がなくてハラハラドキドキ感が少ないのが残念。私の感じ方が鈍感なのかもしれませんけど。そういう意味でアクションもののミステリーではなくて心理ドラマという位置づけでしょうか。
 古き良き時代のハリウッドが背景にあるようですが、そのあたりの知識のない私には今ひとつ読みづらい感じがしました。


原題:DIE A LITTLE
ミーガン・アボット 訳:漆原敦子
早川書房 2007年4月15日発行 (原書は2005年)
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恋空(上下)

2007-05-02 22:44:08 | 小説
 ケータイ小説サイト連載の恋愛小説。
 「実話をもとにしたフィクション」だそうですが、そういう作品にありがちなように、フィクションにしては構成が練れてない、実話にしてはディテールに現実味がない。読者の立場からすると集中してイッキ読みするにはちょっと辛いと思いました。元々ケータイ小説サイトの作品だし、ちょっとずつ気が向いたときに断片的に読むべきなんでしょうね。
 初期に主人公が、恋人の元彼女のさしがねで4人組にボコボコにされてレイプされる設定ですが、これがその後一応許せないとか書かれてはいるものの、その後にほとんど後も引かずあっさり流されているのが、実話だとしたら(あまり詳しく書きたくないということでしょうけど)ちょっとカルチャーショックですし、フィクションだとしたらこういうテーマを主人公の敵役を悪く見せるための材料だけに安直に使えるっていうのもやっぱりちょっとショック。
 家族の存在も、両親が別れるっていう話になるまではほとんど出てこないし、この世代には家族って存在感ほとんどないんだなって感じます。
 最後は恋人が癌だって、ありがちな設定になるのですが、病状についての描写がほとんどなし。ただ「癌」、もうすぐ死ぬって設定だけが強調されている感じ。病人と河原でHするってのもねえ(ってかそれなら病院でやらね?あっ文体うつった)。


美嘉 スターツ出版 2006年10月17日発行
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