福島原発事故後、東京電力と政府の記者会見に足を運び続けた2人の著者が、記者会見場でのやりとりから判明した東京電力と政府の情報公開の姿勢と両者がいかに情報を隠し誤った情報を流し続けたかをレポートした本。
第1章では、事故直後の時点でメルトダウンの可能性が高いことを予測しながら、初期にメルトダウンの可能性を素直に認めた中村幸一郎審議官を広報担当から外し、交代した西山英彦審議官に炉心溶融を否定する発言を続けさせた保安院と、保安院と歩調を合わせて松本純一原子力立地本部長代理に炉心溶融ではなく炉心損傷と説明させ続けた東京電力の姿勢が描写されています。ここでは、メルトダウンを予測しつつそれを隠蔽して虚偽の情報を流し続けた保安院と東京電力の姿勢があらわにされていますが、5月中旬に東京電力と保安院が立て続けにメルトダウンを認めたことについては、マスコミ同様に、「ついに認めた」という評価になっているのはちょっと残念な気がします。保安院と東京電力が2011年5月中旬になって一転してメルトダウンを認めるとともに事故発生直後にメルトダウンしていたと主張し始めたのは、そういうストーリーにしないと特に1号機で地震による配管損傷を否定しつつ早い時期に格納容器圧力と原子炉圧力が同レベルになったことを説明できないからではないかと私はずっと疑い続けています。保安院と東京電力が早期のメルトダウンを認めたことは、潔さではなく、新たな別の隠蔽ではないかと。まぁ、そこは「記者会見場でのやりとりから」は明らかにされていませんからこの本の範囲外ですが。
第2章では「SPEEDI」の放射性物質拡散予測等のデータを公表せずに住民の被ばくを増やしながらその責任の所在を曖昧にし続ける政府の姿勢を、第3章では現実には以前から各所から設計の基準としている津波よりも高い津波が来る可能性を指摘され自身でもその解析をしていた東京電力が「想定外の津波」と言い続けた姿勢を追及しています。
また、東京電力が賠償指針を検討する原子力損害賠償紛争審査会に対して要望書を提出した問題が報じられた際に記者会見でその要望書の公表を求められて、そのような約束がないのに「先方との関係があるため公表できない」と意図的な虚偽説明をした事実も書かれています(149~150ページ)。調査すればすぐ露見するような嘘をつくはずがないから意図的な嘘と考えることはできないとかいう報告書を出した「第三者委員会」もあったようですが、東京電力は調査すればすぐ露見するような嘘を平気でつくんですよね。もう少し東京電力というところがどういうところか調査してから報告書を出して欲しいものです。まぁ、私も、この本が出てすぐに読んでいれば、広報部長でさえ記者会見で平然と意図的な嘘をつくのなら企画部部長も嘘つきだろうと考えることができて、騙されずにすんだかと思えますから、東京電力の嘘つき度についての調査不足に関しては他人のことはいえませんが。
そういった点も含め、東京電力や政府、そしてまたマスコミが福島原発事故をめぐる情報についてどのような姿勢をとってきたのか、これらをどの程度信用できるのかなどについて示唆に富む一冊でした。
日隅一雄、木野龍逸 岩波書店 2012年1月20日発行
第1章では、事故直後の時点でメルトダウンの可能性が高いことを予測しながら、初期にメルトダウンの可能性を素直に認めた中村幸一郎審議官を広報担当から外し、交代した西山英彦審議官に炉心溶融を否定する発言を続けさせた保安院と、保安院と歩調を合わせて松本純一原子力立地本部長代理に炉心溶融ではなく炉心損傷と説明させ続けた東京電力の姿勢が描写されています。ここでは、メルトダウンを予測しつつそれを隠蔽して虚偽の情報を流し続けた保安院と東京電力の姿勢があらわにされていますが、5月中旬に東京電力と保安院が立て続けにメルトダウンを認めたことについては、マスコミ同様に、「ついに認めた」という評価になっているのはちょっと残念な気がします。保安院と東京電力が2011年5月中旬になって一転してメルトダウンを認めるとともに事故発生直後にメルトダウンしていたと主張し始めたのは、そういうストーリーにしないと特に1号機で地震による配管損傷を否定しつつ早い時期に格納容器圧力と原子炉圧力が同レベルになったことを説明できないからではないかと私はずっと疑い続けています。保安院と東京電力が早期のメルトダウンを認めたことは、潔さではなく、新たな別の隠蔽ではないかと。まぁ、そこは「記者会見場でのやりとりから」は明らかにされていませんからこの本の範囲外ですが。
第2章では「SPEEDI」の放射性物質拡散予測等のデータを公表せずに住民の被ばくを増やしながらその責任の所在を曖昧にし続ける政府の姿勢を、第3章では現実には以前から各所から設計の基準としている津波よりも高い津波が来る可能性を指摘され自身でもその解析をしていた東京電力が「想定外の津波」と言い続けた姿勢を追及しています。
また、東京電力が賠償指針を検討する原子力損害賠償紛争審査会に対して要望書を提出した問題が報じられた際に記者会見でその要望書の公表を求められて、そのような約束がないのに「先方との関係があるため公表できない」と意図的な虚偽説明をした事実も書かれています(149~150ページ)。調査すればすぐ露見するような嘘をつくはずがないから意図的な嘘と考えることはできないとかいう報告書を出した「第三者委員会」もあったようですが、東京電力は調査すればすぐ露見するような嘘を平気でつくんですよね。もう少し東京電力というところがどういうところか調査してから報告書を出して欲しいものです。まぁ、私も、この本が出てすぐに読んでいれば、広報部長でさえ記者会見で平然と意図的な嘘をつくのなら企画部部長も嘘つきだろうと考えることができて、騙されずにすんだかと思えますから、東京電力の嘘つき度についての調査不足に関しては他人のことはいえませんが。
そういった点も含め、東京電力や政府、そしてまたマスコミが福島原発事故をめぐる情報についてどのような姿勢をとってきたのか、これらをどの程度信用できるのかなどについて示唆に富む一冊でした。
日隅一雄、木野龍逸 岩波書店 2012年1月20日発行