伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

楽園のアダム

2021-10-17 18:07:20 | 小説
 600年前に「大災厄」と呼ばれる疫病と混乱により絶滅の危機に瀕した人類が、島嶼部に住み島ごとに分業しつつ「カーネ」と呼ばれる人工知能の決定と指示に従い安定した暮らしを享受しているという遠未来において、知の探求を生業とする「珊瑚の島」に生まれたアスムと思い人である幼なじみのセーファが、大学内で連続して発見された惨殺死体とその対応をめぐる学長らの不審な様子に翻弄されていくという展開の小説。
 男と女、雄と雌の関係性、あり方、性と生殖についての問いかけ、投げかけをする作品だと思うのですが、平等を言いつつステレオタイプに思える男女・男女関係の描写、暴力を嫌悪しつつ暴力への寛容と憧憬を感じさせるところがあるのは、あえて問題提起をしているのか、抜きがたい性差意識の所産なのか、読んでいて、戸惑いとスッキリしない感を残しました。


周木律 講談社 2021年9月1日発行
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計算力

2021-10-16 22:08:10 | 実用書・ビジネス書
 日常生活で時々出てきそうな計算を暗算で速く行うための方法論を解説した本。
 加減乗除(足し算、引き算、かけ算、割り算)の他に、確率とか概算も入っているのが、使えるかもって、思わせます。
 いろいろ書かれているのですが、十和一等(10の位の和が10で1の位が同じという2つの数のかけ算:a+b=10のときの(10a+c)×(10b+c))、十等一和(10の位が同じで1の位の和が10の2つの数のかけ算:a+b=10のときの(10c+a)×(10c+b))が、言われてみれば、その条件なら必ず下2桁は1の位のかけ算になって、上側の桁は前者がab+c、後者がc(c+1)になって、暗算が簡単(こういうふうに記号で書くと直感的には簡単に見えないですが、数字であてはめると楽勝)ですが、なかなか気がつかないし、いつまで覚えていられるか…後者の応用で1の位が5の数の2乗は100の位以上が10の位(以上)の数とその次の数(つまり+1)のかけ算で下2桁は25になる(45の2乗は2025、55の2乗は3025、65の2乗は4225、75の2乗は5625、85の2乗は7225とか)というのはたぶん、頭に収まりましたが。
 円周率の概算に22/7を使えというのも概算で速く出すには実用的です。3.1415を掛けた結果を答えろと言われたときには使えませんけど。
 公約数を求めるときには2数の差の約数を考えろというのも、言われてみればそのとおりです。日常生活で公約数を求める必要に迫られる場面はあまりなさそうですが。


鍵本聡 PHP文庫 2021年8月23日発行
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ドローン飛行許可の取得・維持管理の基礎がよくわかる本

2021-10-13 18:20:24 | 実用書・ビジネス書
 ドローン(重さ200g以上の無人飛行機)の飛行許可申請について説明した本。
 国土交通省のホームページに掲載されている機種(著者は世界シェアナンバー1のドローンメーカーDJIのドローンを勧めています)で、国土交通省のホームページに掲載されているドローンスクールが行う国土交通省の確認を受けた技能試験に合格した者が操縦者となって、国土交通省航空局作成の標準マニュアルに基づいて操縦するという申請で、業務目的で1年間日本全国の包括許可を得るというパターンが比較的容易に許可を得られるけれども、それを外すと面倒になるということのようです。84ページからの実際の申請書の説明、書き方を読んでいると、それでもずいぶんとあれこれうるさく面倒に思えますが。まぁ、お役所に出す文書がそういうものだからこそ、著者の仕事である行政書士がやっていけるわけですけど。
 風速毎秒5m以上になると標準マニュアルでは飛ばせない、人口集中地区内での目視外飛行(双眼鏡での監視やドローンのモニターでの監視制御は目視ではないとされます)も標準マニュアルでは飛ばせないと、実際には業務として(空撮業者として)飛ばそうとしたら許可がさらに厳しく面倒になるようで、やっぱりプロの行政書士に任せてくださいってことになるんでしょうね。


佐々木慎太郎 セルバ出版 2021年7月26日発行
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家族と刑法 家庭は犯罪の温床か?

2021-10-12 21:29:59 | 人文・社会科学系
 DV被害者の反撃による加害者の殺傷、児童の性的虐待の処罰、親による児童ポルノ製造・公表、児童の受動喫煙、家族間の財産犯と刑の免除(親族相盗例)の当否、子どもの奪い合いと誘拐・監禁罪、死体の放置と家族の葬送義務、「赤ちゃんポスト」と遺棄罪、体罰の暴行罪処罰、妊娠中絶の広告の処罰(ドイツ語圏)、予防接種の義務化と違反者の処罰を採り上げて、家庭内の行為・家族間の行為について国が介入し処罰することの是非等を論じ、併せて民事法上の問題等を説明する本。
 刑罰、刑法について論じる際には、被害者側の視点から加害者の処罰を求める方向と行動の自由の観点から刑罰の適用を限定・抑制する方向のバランスが求められ、私のような古い世代では、国家権力への警戒感が強く、市民の行動の自由を確保するためにも、刑事罰は最終手段であり限定すべきというのが学生時代の感覚では主流であり優勢でした。今自分が弁護士だから、その観点が強く残っているということはあるかも知れませんが。しかし、近年は、国家権力はお友達と考えているのか、国によって守られているという感覚を持ち、被害者保護を主張して犯罪者の処罰・重罰を求める声が優勢です。そういう声は被害者保護をいうのですが、被害者は加害者を処罰して欲しいという感情は持つでしょうけれども、すでに被害を受けており加害者を重く処罰してもそれで被害がなくなったり回復するわけではありません。実際には、(自分は加害者に/あるいは被告人に、なり得ることは想定せず)自分が同じような被害を受けることは避けたいという感情を被害者にこと寄せして声高に叫ぶ人が多いということだと思います。そういうお上に守ってもらいたい/権力は自分の味方だと思っている人たちの重罰化を求める声に押されて重罰化が進んだ結果困ったのが、最初のテーマのDV被害者の反撃問題(明らかに同情すべき反撃が、法定刑が重くて執行猶予にできない)です。これを最初に採り上げた著者の姿勢は、重罰化への反省というか、重罰化・処罰一辺倒ではうまくないという方向かと思ったのですが、著者は、すでに導入された刑事罰化・犯罪化はほぼ全面的に肯定・推進し、未導入のさらなる犯罪化は一部は不要だとも言っていますが、やはり多くの場面で推進方向の意見を述べて行きます(処罰するのは行き過ぎだと言う場面は少なく、処罰できないのはけしからんと言う場面が多く感じられます)。刑法学者も、国の政策、重罰化に流れる世論に棹さそうなどと思う時代ではないということでしょうか。4歳の子どもが飲食店内でいたずらなどをしたため店を出た後自動車内で注意するために父親が自分の方に顔を向けるように言ったが言うことを聞かないので左頬を引っ張るために1回つまんだ(つねったということでしょうね)のを有罪(罰金5万円)とした判決が紹介されています(203ページ)。私の感覚では、これを起訴する検察官も有罪判決を言い渡した裁判官も異常でやり過ぎとしか思えません。著者は、この判決を紹介しつつ、裁判所はこのように評価したものと解されるという検討はしていますが、明確な批判は避けています(とっても慎重な及び腰な回りくどい言い方で批判的な姿勢を示しているつもりなのかも知れませんが)。刑法学者が、権力や裁判所に忖度して法律や裁判を批判しないというのなら、世も末だと思います。


深町晋也 有斐閣 2021年7月30日発行
「書斎の窓」連載
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宇宙を解く唯一の科学 熱力学

2021-10-10 18:07:55 | 自然科学・工学系
 熱力学の科学史。
 蒸気機関の改良に始まり、ホーキングの宇宙論に至るまで、実用的な技術・機械の考案や純粋の思考実験・理論物理的な手法などさまざまな形で熱力学の発展に貢献した科学者たちの研究と人生を紹介しています。熱力学自体の体系的な解説ではなく、それぞれの科学者による学問的な成果の説明よりもそれを生み出した科学者の発見・検討の経緯の方に重点を置いていて、著者も科学者ではなくてドキュメンタリー作家であるため、専門書的な難しさはそれほどは感じず、読みやすい本です。前半は。終わりの方になるにつれて、理論的に複雑になり、1章のページ数も増え、難しくなり、読むのがしんどくなっていきますが。
 電磁気学分野で有名なマクスウェル、6歳年上の嫉妬深い妻と生涯仲睦まじく暮らしたようですね。映画俳優を話題にすると、その人は不倫したの離婚したのどういう相手とどうなったのと、私の知らない私生活上の情報を披露してその側面からの評価を聞かせてくれるカミさんと話しているような新発見をさせてくれる本でした。


原題:Einstein's Fridge : How the Difference Between Hot and Cold Explains the Universe
ポール・セン 訳:水谷淳
河出書房新社 2021年6月30日発行(原書も2021年)
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緊張を味方につける脳科学

2021-10-09 21:20:58 | エッセイ
 ここ一番というときに、あるいはそうでもない日々の場面であれ、パフォーマンスを上げるための心がけなどについて、さまざまな側面・観点から語るエッセイ。
 各章ごとにタイトルが定められ、それだけではなく章末にはその章の「キーポイント」がまとめられており、内容としては著者の専門領域の脳科学の話・説明、達人、特にスポーツ分野の成功者の話などがちりばめられているのですが、今ひとつテーマに向けて順を追って論じていき論証していくという感じよりも、関連することを思いつくままに並べているエッセイ(集)という読後感を持ちます。著者自身が、「私は無理をせず、自然体で、練習即本番という生き方を続けていくことに決めました。」(96ページ)、「これまでは、練習と本番は別物だと考えられてきました。準備期間があって、その準備期間は人に見せるものではなく、本番を迎えたときに、本番でのパフォーマンスだけを見せるのがよいとされたきた。しかしもう、そんな悠長なことをやっていられる時代ではないのかも知れません。」(96ページ)、「私は、自分の書くテキストは、個人的なメールを除いて全て公開されるものだという意識を持っています。練習のために書くものはないし、密かに練習しているという状態がないのです。」(102ページ)、「書き下ろしている本の原稿は、ツィッターに比べて、完成させるまでに多くの時間がかかるけれども、やはり公開することを前提で書いています。文章の長さや深さは違えど、本番であることについては、本とツィッターで差がないのです。」(102ページ)と述べているように、ツィッターよりも多くの時間をかけ深さは違えど、そう詰めて書いたものではないと見るべきでしょうか。
 無理をせずに自然体でといってみたり、綿密・周到極まる準備を勧めたり、無意識の境地を誉め讃えたかと思うと必死さや合理性を超えた精神論・根性論を持ち上げるといった具合で、1つの方法論ではなく、たくさんのポケットを持つことが大事だという観点でのチップス集だと読み取るべきなのでしょう。


茂木健一郎 河出新書 2021年2月28日発行
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患者のための最新医学 パニック障害 正しい知識とケア 改訂版

2021-10-08 20:40:35 | 実用書・ビジネス書
 パニック障害の症状と診断・治療法、日常生活上の注意と家族の接し方などを説明した本。
 パニック障害は、「何の理由もないのに」不意に強烈な恐怖や不安におそわれ、激しいパニック発作が起こる、パニック発作には、息がつまる、心臓が破裂しそうになるといった身体症状(自律神経症状)が伴う(15ページ)ということですので、ピンチや危険にさらされてパニックになるのとは違い、また「気のせい」ではないのですね。と言ってもパニック発作の判定基準は、動悸・心悸亢進または心拍数の増加、発汗、身震いまたは震え、息切れ感または息苦しさ、窒息感、胸痛または胸部の不快感、吐き気または腹部の不快感、めまい感・ふらつく感じ・頭が軽くなる感じまたは気が遠くなる感じ、冷感・悪寒または熱感、異常感覚(感覚麻痺またはうずき感)、現実感喪失、コントロールを失うことに対する恐怖または気が狂うことに対する恐怖、死ぬことに対する恐怖のうち4つ以上の症状を伴う強い恐怖や不快感の急上昇ということだそうです(58ページ)ので、実際には問診でそう答えればそう診断されることになりそうです。
 「パニック障害の人がうつ病(非定型うつ病)を併発するようになると、自己中心的でわがままな行動をとることがあります。」(31ページ)、「パニック障害に非定型うつ病を併発すると、非常に攻撃的になる場合があります。攻撃性は、『怒り発作(アンガーアタック)』となってあらわれます。」(31ページ)、「怒り発作は攻撃性をともない、大声を上げて相手を非難したり、暴力的になって手あたりしだいにものを壊したりします。」(32ページ)って、周りはこれじゃたまらないですね。「しかし、発作がおさまると、患者さんは『申しわけないことをした』と自己嫌悪におちいり、うつ状態が悪化します。」(32ページ)。なるほど、発作が治まれば反省する場合は病気、発作的な怒りが過ぎ去っても相手が悪いと思い続けそう言い張っている場合は性格の悪さということですね。
 規則正しい生活と適度な運動、飲酒・喫煙・コーヒーを避ける、と健康な生活を心がけるように勧められていますが、「米国の研究によると、パニック障害の患者さんの約7割が、コーヒー1日5杯でパニック発作、または類似した不安症状を引き起こすと報告されています。」(104ページ)って…


坪井康次監修 高橋書店 2021年5月20日発行
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イチケイのカラス 上下

2021-10-06 20:12:44 | 小説
 元弁護士で東京地方裁判所第3支部第1刑事部の裁判官となった入間みちおが、定年近いこれまでに30件の無罪判決を書いた部長の駒沢裁判官に試みとして裁判長を任され、新人のエリート裁判官坂間と合議を組んで、気になる事件では次々と職権を発動して検証や尋問を積極的に進めて事件の真相に迫るという2021年春期のテレビドラマを小説化したもの(ドラマの原作は漫画)。
 敢えて戯画化しドラマとして面白くしているんでしょうけれども、法律監修を受けていないんでしょうね。業界的には、おいおいというところが多々見られます。入間裁判官みたいな裁判官いないでしょう、というところは、ドラマだから構わないと思うんです。法律上不可能かというと、刑訴法上、裁判所が職権で証人尋問をしても、所在尋問をしても、検証をしても別に構いません。刑事裁判の構造とか役割というもっと大きな制度というか枠組みでは問題はありますが。それよりも、入間裁判官、毎回「職権を発動します。裁判所主導で捜査を行います」っていうんですが、これを「捜査」っていう必要ありません。起訴後なんですから、単に証人尋問を行います、検証を行いますっていえば済むのに、どうしてわざわざ変な概念というか間違った概念を持ち込むのか。むしろ、裁判所が職権で行う尋問等について当事者を立ち会わせないことの方が不公正で許されないはずですが、これをエリート裁判官で入間のやり方に批判的なはずの坂間が第1話から1人で聞き込みして実行しています(上巻57~58ページ)。ドラマだから別にいいんですが、最初っから坂間の方が法律上はど外れたことやっているという設定、作者わかって書いてるんでしょうか。被告人質問での被告人の答が気に入らないって反論するのに「異議有り!」っていう検察官(上巻24ページ、下巻162ページ)もありえない。単に検察官からも質問しますといって聞けばいいだけの場面でしょう。高裁の再審開始決定に対して検察官が「即時抗告」って(下巻11ページ)。高裁の決定に対しては抗告はできなくて、「抗告に代わる異議申立」(刑事訴訟法第428条:まぁ、このあたりはマニアックだから、知らなくても許してあげていいかとも思いますが)。そして高裁が再審請求を受けて再審開始決定したのなら再審も高裁のはずなのに、何で地裁で再審が始まるのか(下巻9~16ページ)。入間みちおが弁護士時代に挫折を味わった「12年前の事件」の黒幕の1人中森検事は、次長検事(最高検、検察全体のナンバー3)のはずですが(下巻33ページ、35ページ、38ページ等)、なぜか「次席検事」(地検・高検のナンバー2)とも度々書かれています(下巻11ページ、44ページ、45ページ)。ドラマなんだから敢えて現実とは違う設定にしますというんじゃなくて、単純に刑事裁判の仕組みとか運用自体がわかってない感が強くて、業界人としてはもっと調べて書いてよと思ってしまいます。


蒔田洋平 扶桑社文庫 2021年5月31日発行
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改訂版 自治体職員のための災害救援法務ハンドブック

2021-10-05 23:32:21 | 実用書・ビジネス書
 災害発生時に自治体職員が行うべきこととその法的根拠、国の通達やガイドライン、市町村と都道府県、国の役割分担と財政負担等について説明した本。
 部外者の立場で読んでも、災害時には自治体が行うべきことや、被災者が直面する苦労・苦痛・不便がたくさんあるのだなということを実感できます。また、弁護士として、こういった行政法的な分野はふだん扱わないので、多くの法律や通達や取り決め、その改正があること、そして自分がそういうことをまるで知らないことを痛感しました。弁護士であれば法律を知っているなどというのはまったくの幻想だと日頃思ってはいるのですが、やっぱり事件として業務として取り扱わない分野のことは本当に知らないのだと改めてわかりました。知らない分野は怖くて手が出せないなと思い直します。
 法律の分野でも特に行政法規では、条文がすごく複雑で、括弧が入れ子構造で長く続くものが多いのですが、著者がそういう領域を見慣れているせいか、この本でも根拠引用の長~い括弧が多く、とても読みにくい。括弧内をポイントを落として少し小さな字にするとかできないのかなと、自分が書くときにはあんまり考えないんですが、つくづく思いました。
 「災害協定」というのが自治体が弁護士などの専門士業と被災した住民や事業者の再建等に資する法律や制度の情報提供・各種相談活動の実施のための協力要請の取り決めだ(24ページ)というのを初めて聞きました。災害対応の中で弁護士、法律相談の役割がそんなに大きいのか(単に「災害協定」という普遍的な用語でそういう意味なのかという驚き)と…まぁ、この本のタイトルが災害救援「法務」ハンドブックだし、著者が2人とも弁護士だから法律が重視されるということかもしれませんが。
 「東日本大震災後に避難所の状況を視察した海外有識者たちは、日本の避難所は国際的な難民支援基準を下回るという厳しい指摘をした。」(55ページ)って、考えさせられますね。
 被災者の安否確認や行方不明者の氏名公表(40~45ページ)、被災者台帳の作成(88~97ページ)あたりの記載を見ていると、災害時で人命優先なのでそうだろうと思う反面、個人情報の目的外使用なんて法令の根拠さえ作ればやり放題という感じで、やはり役所に個人情報を取得させたら国・行政のさじ加減でどうにでもできるのだなと思います。行政の甘い言葉にご用心、ですね。


中村健人、岡本正 第一法規 2021年8月20日発行(初版は2019年)
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娘からの相続および愛人と息子の相続の結末

2021-10-03 18:10:05 | 小説
 夫と離婚し、バツイチ子なしの娘直美と息子雄二夫婦と孫智也と同居している薬師ひろみが経験した、娘を交通事故で亡くした後の元夫赤羽光夫との諍い、元夫死亡後のその妻(元愛人)江藤金子と雄二の相続争いでの心労を描いた小説。
 ただ世の中には酷いというか常識や良識がないヤツがいるということをアピールする、作者が何かうっぷん晴らしをしているという感じのもので、小説として読んだときの面白みや味わいというものが感じられませんでした。
 テーマが離婚、相続なのに、今どきこれほどまでに法律的にあり得ない間違いだらけのものが堂々と出版されていることは驚きです。経験もなく知らないことなら、きちんと調べて書くなり、法律監修を頼むべきだと思いますし、作者がまったくの素人なら、出版社の編集者が弁護士に見せてみるくらいのことはすべきだと思うのですが。
 弁護士をしている姉がDVの話を聞いて、証拠がないからといって「離婚できる確率は非常に低いと思う」(26ページ)…今どきこんなことをいう弁護士がどこにいます?
 弁護士の姉が離婚調停を成立させて「確定証書」(そんな言葉はなく、「調停調書」のはずですが)を持ってきて、内容は後でゆっくり確認しなさい(31ページ)…依頼者本人の意向を確認せずに弁護士が調停を成立させて事後承認なんて言ったら懲戒ものですし、未成年子の親権の指定がない離婚調停なんてあり得ません。
 妻が離婚して復氏したときに、未成年子は妻の氏に変更できない(32ページ)…まったく初耳です。民法第791条を見てください。
 「地方裁判所に遺産相続の調停を申し立てなければならない」(54ページ)→「家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てなければならない」
 夫死亡後に妻が前妻との子を無視して単独相続の手続を済ませてる(56ページ、62ページ等)って…妻に全財産を相続させる遺言があるのでない限り、どうやったらそんなことができるんですか?しかもそんなおよそあり得ないむちゃくちゃな主張を調停委員が認める(66ページ、72ページ)、別居している相続人は無視して相続手続ができると調停委員がいう(73ページ)、弁護士の姉もそれをしかたがないという(75~80ページ:この説明の中でいわれている「休眠口座」の「トリック」もでたらめで、休眠口座を使ったからそれ以外の遺産を勝手に相続手続をして有効になるなどあり得ません)…
 この人が書いていること、弁護士の目からは頭を抱えたくなるようなでたらめばかりです。こんなの読んで信じる人がいたら困ります。


川井れもん 幻冬舎 2021年7月7日発行
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