伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

娘からの相続および愛人と息子の相続の結末

2021-10-03 18:10:05 | 小説
 夫と離婚し、バツイチ子なしの娘直美と息子雄二夫婦と孫智也と同居している薬師ひろみが経験した、娘を交通事故で亡くした後の元夫赤羽光夫との諍い、元夫死亡後のその妻(元愛人)江藤金子と雄二の相続争いでの心労を描いた小説。
 ただ世の中には酷いというか常識や良識がないヤツがいるということをアピールする、作者が何かうっぷん晴らしをしているという感じのもので、小説として読んだときの面白みや味わいというものが感じられませんでした。
 テーマが離婚、相続なのに、今どきこれほどまでに法律的にあり得ない間違いだらけのものが堂々と出版されていることは驚きです。経験もなく知らないことなら、きちんと調べて書くなり、法律監修を頼むべきだと思いますし、作者がまったくの素人なら、出版社の編集者が弁護士に見せてみるくらいのことはすべきだと思うのですが。
 弁護士をしている姉がDVの話を聞いて、証拠がないからといって「離婚できる確率は非常に低いと思う」(26ページ)…今どきこんなことをいう弁護士がどこにいます?
 弁護士の姉が離婚調停を成立させて「確定証書」(そんな言葉はなく、「調停調書」のはずですが)を持ってきて、内容は後でゆっくり確認しなさい(31ページ)…依頼者本人の意向を確認せずに弁護士が調停を成立させて事後承認なんて言ったら懲戒ものですし、未成年子の親権の指定がない離婚調停なんてあり得ません。
 妻が離婚して復氏したときに、未成年子は妻の氏に変更できない(32ページ)…まったく初耳です。民法第791条を見てください。
 「地方裁判所に遺産相続の調停を申し立てなければならない」(54ページ)→「家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てなければならない」
 夫死亡後に妻が前妻との子を無視して単独相続の手続を済ませてる(56ページ、62ページ等)って…妻に全財産を相続させる遺言があるのでない限り、どうやったらそんなことができるんですか?しかもそんなおよそあり得ないむちゃくちゃな主張を調停委員が認める(66ページ、72ページ)、別居している相続人は無視して相続手続ができると調停委員がいう(73ページ)、弁護士の姉もそれをしかたがないという(75~80ページ:この説明の中でいわれている「休眠口座」の「トリック」もでたらめで、休眠口座を使ったからそれ以外の遺産を勝手に相続手続をして有効になるなどあり得ません)…
 この人が書いていること、弁護士の目からは頭を抱えたくなるようなでたらめばかりです。こんなの読んで信じる人がいたら困ります。


川井れもん 幻冬舎 2021年7月7日発行
コメント
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