久しぶりに棚から引っ張り出してきたのは次のCD。

ブラームス ピアノ独奏曲全集4 ピアノ:ピーター・レーゼル、1972・3年録音
3つの間奏曲(作品117)、6つの小品(作品118)、4つの小品(作品119)
ブラームス(1833-1897)の死の三年前の、ソロピアノ曲としてはブラームスの最後の3つの曲集。こののち作品番号は122までしかない。
このCDをかけるのは実に久しぶりである。1997年頃に購入して2回くらいしか聞いていない。
演奏者についてはWikiでは「冷戦時のいわゆる“鉄のカーテン”の影響もあり日本を含む当時の西側諸国での知名度はさほど高くないが、その実力は一級品である。音楽評論家の大木正純はベートーヴェンのピアノ協奏曲全集の録音について「ベートーヴェンを心から愛する人々には、これは一つの新しい、そして掛けがえのない宝物となることを信じて疑わない」と述べている。
作品117の「3つの間奏曲」は実に静かに始まる。心を落ち着かせるにはいい曲集である。地味な曲なので、演奏会などではあまり弾かれることはないと思う。私のような性格の人間が一人で深夜に聴くにはぴったりではないかと思う。
作品118の「6つの小品」も第3曲と第6曲が少し大きな音と躍動的なリズムで始まる以外静かである。
作品119の「4つの小品」もゆったりした静かな曲である。クララ・シューマンあての手紙では第1曲について「この小品はとても憂鬱で、「きわめてゆっくり演奏すること」というのは、決して控えめな表現ではありません。すべての小節、すべての音符がリタルダンドのように聞こえ、すべての音から憂鬱が吸い込まれるかのように‥」と記されている。
私はこの4つの小品の第2曲がとても好きだ。少しだけ明るいしなやかな曲想が垣間見える。しかし途中でまた闇の中に消えていくように静かに推移する。魅力的な曲である。繰り返しこれをきいてもいいと思っている。第4曲は全3曲と違いちょっと異質な感じで私の好みでないのが悲しい。ただしよく演奏される曲である。演奏会のアンコールなどには向いているとは思う。
派手な演奏ではないのがいい。アクの強さや過剰な表現を避けていて、他の演奏家の演奏は聞いたことはないが、この演奏がわたし好みの演奏だと思っている。
私のブラームス体験というのはちょっと変わっている。昔、20代の初めに夏目漱石の小説を読んでいた時、たまたまブラームスの交響曲2番が気に入って幾度も聞いていた時に重なる。それで何の根拠もないのだが、いつしか夏目漱石の小説世界、とくに後期の「行人」以降の小説群とブラームスの曲想が、私の頭の中でどういうわけか連動している。
夏目漱石がブラームスの曲を好んだかどうかはまったくわからない。1900年のロンドン留学時に聴いたという話も無いようなのだが‥。もしも聞いていたらどんな感想を記したであろうか。
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ブラームス ピアノ独奏曲全集4 ピアノ:ピーター・レーゼル、1972・3年録音
3つの間奏曲(作品117)、6つの小品(作品118)、4つの小品(作品119)
ブラームス(1833-1897)の死の三年前の、ソロピアノ曲としてはブラームスの最後の3つの曲集。こののち作品番号は122までしかない。
このCDをかけるのは実に久しぶりである。1997年頃に購入して2回くらいしか聞いていない。
演奏者についてはWikiでは「冷戦時のいわゆる“鉄のカーテン”の影響もあり日本を含む当時の西側諸国での知名度はさほど高くないが、その実力は一級品である。音楽評論家の大木正純はベートーヴェンのピアノ協奏曲全集の録音について「ベートーヴェンを心から愛する人々には、これは一つの新しい、そして掛けがえのない宝物となることを信じて疑わない」と述べている。
作品117の「3つの間奏曲」は実に静かに始まる。心を落ち着かせるにはいい曲集である。地味な曲なので、演奏会などではあまり弾かれることはないと思う。私のような性格の人間が一人で深夜に聴くにはぴったりではないかと思う。
作品118の「6つの小品」も第3曲と第6曲が少し大きな音と躍動的なリズムで始まる以外静かである。
作品119の「4つの小品」もゆったりした静かな曲である。クララ・シューマンあての手紙では第1曲について「この小品はとても憂鬱で、「きわめてゆっくり演奏すること」というのは、決して控えめな表現ではありません。すべての小節、すべての音符がリタルダンドのように聞こえ、すべての音から憂鬱が吸い込まれるかのように‥」と記されている。
私はこの4つの小品の第2曲がとても好きだ。少しだけ明るいしなやかな曲想が垣間見える。しかし途中でまた闇の中に消えていくように静かに推移する。魅力的な曲である。繰り返しこれをきいてもいいと思っている。第4曲は全3曲と違いちょっと異質な感じで私の好みでないのが悲しい。ただしよく演奏される曲である。演奏会のアンコールなどには向いているとは思う。
派手な演奏ではないのがいい。アクの強さや過剰な表現を避けていて、他の演奏家の演奏は聞いたことはないが、この演奏がわたし好みの演奏だと思っている。
私のブラームス体験というのはちょっと変わっている。昔、20代の初めに夏目漱石の小説を読んでいた時、たまたまブラームスの交響曲2番が気に入って幾度も聞いていた時に重なる。それで何の根拠もないのだが、いつしか夏目漱石の小説世界、とくに後期の「行人」以降の小説群とブラームスの曲想が、私の頭の中でどういうわけか連動している。
夏目漱石がブラームスの曲を好んだかどうかはまったくわからない。1900年のロンドン留学時に聴いたという話も無いようなのだが‥。もしも聞いていたらどんな感想を記したであろうか。
