
伊藤恵のピアノ独奏による「シューマニアーナ第2巻」を聴いている。シューマンの楽曲というのはあまり私にはなじみがないのだが、何回も聴いていると懐かしく聴こえてくるようになる。これほどシューマンという作曲家に慣れ親しんだのは初めての体験である。
ピアノの弾き方、聴かせ方はとてもオーソドックスな感じがする。あまり思い入れがたっぷり過ぎると聴く方もつらくなるが伊藤恵の演奏スタイルは、何回も聴くことに耐えられる演奏なのかもしれない。派手さや大向こうをうならせる演奏とは遠い演奏なのだろうと感じられる。私が好感をもつ所以である。
伊藤恵は1983年の第32回ミュンヘン国際音楽コンクールのピアノ部門で第1位になった。そのときのニュースは覚えている。しかしもう34年も前のことになってしまっている。
このCDにおさめられている4曲の内、「フモレスク作品20」と「ピアノ・ソナタ第2番作品22」はそれぞれ28分、18分を超える。私はこの「フモレスク」が気に入った。
解説によると「フモレスク作品20」はシューマン(1810~1856)の1838年から39年にかけての作品である。「ピアノ・ソナタ第2番」は1835年に一応完成し、1838年に第4楽章を書き換えている、とのことである。
元の第4楽章はこのCDの最後に収録されている「プレスト・パッショナート」といわれている。遺作と目次には記載されているが、死後10年たって独立した曲として出版されたことにより「遺作」とされたようだ。ソナタの第4楽章としてどちらがいいのかは、私にはわからないが、クララの提案により今の形に変わったという経過を尊重すれば、今の形がシューマンにとっても納得のいく改変なのであろうと思われる。
このシューマニアーナのシリーズは13巻まであるという。第11巻まで私は揃えた。いづれも購入したときに聞いただけで、放置してあった。第1巻、第2巻は聴いていて心地良いことが実感できた。これから順にじっくりと聴いていきたいとおもう。


