★爆音や霜の崖より猫ひらめく 加藤楸邨
「火の記憶」所収。前書きは「昭和十九年十二月二十一日戦局苛烈の報あり/午後九時、一機侵入、照空燈しきりなり」とある。
清水哲男氏の解説に従うと、照空燈というのは多分爆撃機を探すサーチライト(探照燈)のことと思われる。またサーチライトの光が崖地の上にいる猫を照らしたと解釈できるようだ。猫が慌てて身を翻して隠れたのではないか。猫の慌てた緊張は、人間の緊張した様でもあるだろう。固唾を飲んで爆音下に息を殺し、身を潜めている作者がいる。別の見方をすると、猫のように身軽に身を翻すことは出来ず、ひたすら身をかがめているのが人間である。その敏捷さを羨んでもいるかもしれない。
いづれにしろ極めて緊張した瞬間が続く。灯火管制下の闇にサーチライトの光が動き、爆撃機がその光に浮び、高射砲が力なく爆撃機のはるか下で一瞬炸裂する。瞬間の光の乱舞の中で闇は深く、そして爆撃機の落とす爆弾や焼夷弾の音、爆撃機の音に緊張が連続する。
「猫ひらめく」が闇に浮ぶ一瞬の動きをうまく表現している。こんな緊張感は経験はしたくない。
「火の記憶」所収。前書きは「昭和十九年十二月二十一日戦局苛烈の報あり/午後九時、一機侵入、照空燈しきりなり」とある。
清水哲男氏の解説に従うと、照空燈というのは多分爆撃機を探すサーチライト(探照燈)のことと思われる。またサーチライトの光が崖地の上にいる猫を照らしたと解釈できるようだ。猫が慌てて身を翻して隠れたのではないか。猫の慌てた緊張は、人間の緊張した様でもあるだろう。固唾を飲んで爆音下に息を殺し、身を潜めている作者がいる。別の見方をすると、猫のように身軽に身を翻すことは出来ず、ひたすら身をかがめているのが人間である。その敏捷さを羨んでもいるかもしれない。
いづれにしろ極めて緊張した瞬間が続く。灯火管制下の闇にサーチライトの光が動き、爆撃機がその光に浮び、高射砲が力なく爆撃機のはるか下で一瞬炸裂する。瞬間の光の乱舞の中で闇は深く、そして爆撃機の落とす爆弾や焼夷弾の音、爆撃機の音に緊張が連続する。
「猫ひらめく」が闇に浮ぶ一瞬の動きをうまく表現している。こんな緊張感は経験はしたくない。