沖縄で見たのは秋あかねではなかったが‥
★赤とんぼ夕暮れはまだ先のこと 星野高士
★カタカナの言葉に詰まり秋あかね 庄司 猛
★特攻碑に尾は空へ向け赤蜻蛉 菅原 涼
1句目、山で赤とんぼの群れに遭遇することがある。山道に転がる石にも赤とんぼが止まっていて、踏みつぶしそうになり、こちらが転倒しそうになりながら避けることがある。すると飛んでいる赤とんぼが私の進む方向をずっと先導するように飛んでいく。いい加減付き合って、日陰にはいるといつの間にかいなくなる。とんぼは日かげはあまり好まないように見える。しかし水のあるところは産卵場所として盛んに飛び回っている。
赤とんぼを見るとなんとなく夕方になったように思えて、自然に足が速くなってしまう。どうしてかな、と思っている。とんぼの人懐っこさが、人恋しくさせるのだろうか。山の独り歩きのときの赤とんぼは、独り言の相手になる。しかし遭遇するのは意外と朝であったり、お昼直後が多いようだ。まだ体が山道になれていない朝や昼休憩直後に、癒しのように現れる。不思議な生き物である。その赤い色が夕陽の色合いとどこか通底していて、それで夕方を連想してしまうのではないだろうかと思っている。
2句目、この歳になると、たとえ短いカタカナ語であってもなかなか頭に入らない。知っていても意味がうまく言えない。そういう時に言葉に詰まる。人と話していて、言葉に詰まる時というのは、自分が使うことばの意味にふと疑問を持ってしまうときである。そして詰まるともう先にはなかなか行けずに、その言葉を飲み込むまで次のことばが出てこない。
3句目、赤とんぼは尾を高く反って止まることがある。その先には魂魄が漂っているのだろうか。