Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。俳句、写真、美術館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。労組退職者会役員。

「リヒテンシュタイン侯爵家の至宝展」その2

2019年11月23日 23時45分38秒 | 芸術作品鑑賞・博物館・講座・音楽会等

   

 第2章「宗教画」では多くの作品に惹かれた。
展示順では、

・クラーナハ(父)の「イサクの犠牲」、イサクとアブラハムが大岩の上に小さく描かれ、大岩の下に従者二人とロバが絵の主題のように描かれていた。珍しい構図である。そして従者二人の表情がこのドラマには一切無関心に寛いでおり、宗教画の名を借りた他の目的のための作品のように感じた。

・はじめて名を聞くジロラモ・フォラボスコの「ゴリアテの首を持つダヴィデ」、ダヴィデの上半身が画面からはみ出しそうに大きく描かれ、巨人ゴリアテの首を重そうに運んでいる。首が画面上方に暗く目立たずに描かれており、場面説明が過剰な旧約聖書のエピソードを題材にした作品として珍しい構図のように思えた。ダヴィデの迫力ある描き方に惹かれる。



・これもはじめて名を聞くマルコ・バザイーティの「聖母子」。美術館のホームページから画像を拝借した。初めはマリアの造形と背景の景色に惹かれた。展示解説ではビザンティン美術のイコンの影響があるとのことであった。しかし赤子キリストの造形がぎこちなく、違和感を持った。後にキリストの姿勢は磔刑を暗示し、足元は棺をありこれもキリストの死を暗示していると教わった。



・ルーベンスの「聖母を花で飾る聖アンナ」は幼い子どもの姿態を示す天使がいかにもルーベンスらしい。天使も入れて9人を超える人物が描かれているが、聖アンナの老いても気品のある表現に焦点を当てている。焦点が鮮明で散漫にならないところに魅力があると思った。



・クラーナハ(父)の「聖バルバラ」は、1520年以降の作品ということであるが、人物の造形が生きている。そして人物の背景に金箔をはっており、日本の金屏風の諸作品を思い浮かべた。作品の題材などはかけ離れているが、金箔を背景に使うという共通性が不思議に思えた。インドでは金の背景の絵画はあるらしいが、中国ではそのようなものは聞いたことがない。アジアの東の果ての日本の美術とどのような影響関係が想定されるのだろうか、と思っている。



・今回の展示で私が一番惹かれたのが、やはり初めて名を聞くシモーネ・カタリーニの「少年の洗礼者聖ヨハネ」。展示解説では「ヴェネツィア派の影響を受け‥、グイド・レーニのような明暗表現を採用しつつも‥、カラバッジョの様式と接近‥」と記してあった。造形的に右手の指が大きすぎるのであるが、しかし、この手が羊を守るような仕草が生きている。繊細な指が柔らかい羊の毛を感じている。顔から肩に掛けたあたる光の曲線が右手の指先に至り羊の顔まで続いて円環をなしている。これが効果的である。

・最後にグイド・レーニの「マグダラのマリア」。これは何回か見たことがあるのか、あるいは同じような作品がいくつかあるのか、分からないが、意識を失ったかのような恍惚の表情は印象的である。しかし見方によってはあまりに極端な恍惚の表情でもあり、好悪がありそう。


終日の雨

2019年11月23日 21時47分03秒 | 日記風&ささやかな思索・批評

 本日も終日雨。朝の内は昨日に比べて風が少し暖かく感じたけれど、夕方になるととても寒く感じるようになった。しかし気象庁のデータでは本日の最高気温は20時に記録した12.9℃となっている。体感と実際の気温とは違いがあったようだ。
 秋の長雨は秋霖とも、すすき梅雨ともいう。しかしこれは8月から10月にかけて秋雨前線によるものである。今は11月下旬、現在熱帯低気圧のある沖縄から関東地方の南にある低気圧まで前線が伸びており、これが北の高気圧に押されて南下した秋雨前線といえるのだろうか。
 明日も午前中は雨。昼からの降水確率は20%となり、曇。最高気温も19℃と暖かい。
 明日は親の姉妹とランチの予定。妻と私で付き添いでご相伴にあずかる予定。また午後にはメガネが出来上がる予定になっている。会食後、わたしだけメガネを受け取りに行く。

 雨で二日続けてウォーキングが出来ず、がっかり。


「リヒテンシュタイン侯爵家の至宝展」その1

2019年11月23日 20時40分52秒 | 芸術作品鑑賞・博物館・講座・音楽会等

   

 本日は解説付きで「~建国300年ヨーロッパの宝石箱~リヒテンシュタイン侯爵家の至宝展」を見てきた。  はじめはあまり興味をひかなかったが、お誘いを受け、中村宏美アートナビゲーターの解説を聴きながら時間をかけて一巡してきた。

 解説では

 現在世界で唯一、家名が国名になっているリヒテンシュタイン侯国は、今年建国300年を迎え、かつて神聖ローマ皇帝に仕えたリヒテンシュタイン侯爵家が統治しています。アルプスに抱かれた小さな国土にはライン川が流れ、大都市の喧騒とは無縁な穏やかな時間が流れています。この国は現在金融業などが盛んで、小さいながら世界屈指の豊かさを誇りますが、昔から侯爵家は代々領地経営に成功して富をたくわえ、皇帝にも貸し付けを行うほどでした。その富を背景として積極的に収集した美術作品により、現在のコレクションが形成されていったのです。

 世界で唯一、侯爵家(君主)の家名が国名となっているリヒテンシュタイン。スイスとオーストリアにはさまれた小国ながら、世界でも屈指の規模を誇る個人コレクションを有し、その華麗さが宝石箱にもたとえられ世界の注目を集めています。

 本展は、侯爵家秘蔵のルーベンス、ヤン・ブリューゲル(父)、クラーナハ(父)を含む、北方ルネサンス、バロック、ロココを中心とする油彩画と、ヨーロッパでも有数の貴族の趣向が色濃く反映された、ウィーン窯を中心とする優美な陶磁器、合わせて約130点で構成されます。絵画と陶磁器の共演は、優雅さとくつろぎが調和する貴族の宮廷空間へ誘ってくれることでしょう。

と記されている。

 この展示の中で、「ルーベンス、ヤン・ブリューゲル(父)、クラーナハ(父)を含む、北方ルネサンス、バロック、ロココを中心とする油彩画」に惹かれて見学してきた。
 全体は7つのコーナーに分かれ、第1章「リヒテンシュタイン侯爵家の歴史と貴族の生活」、第2章「宗教画」、第3章「神話画・歴史画」、第4章「磁器-西洋と東洋の出会い」、第5章「風景画」、第6章「風景画」、第7章「花の静物画」という構成であった。

 特に第2章「宗教画」、第3章「神話画・歴史画」、第6章「風景画」には惹かれる作品が数多くあった。また第4章「磁器-西洋と東洋の出会い」は刺激ある作品が多く展示されていた。   (続く)