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ポトスライムの舟(津村 記久子)(講談社 2009) 75点

2009-10-15 22:19:19 | 読書遍歴
時間給800円のパートから月給14万円の正社員になった主人公。計算したら800円×7h×25日=14万円でペイ的にはまったく変わらない。これで、転職したとはいえ大卒の女性29歳の給料である。親元で暮らしながらのつつましい生活感がにじみ出る。

ほとんどが彼女の生活スケッチというものである。大阪弁が話し言葉そのままの表現されているので、とてもいい。大阪弁がこんなに詩的で美しいというのも初めて感じる。設定が古都奈良というのものどかでいい。

ほんと、同級生との腐れ縁の会話。結婚してもなかなかうまくいかず別居している人、学生時代は優秀だったのに一挙家庭に入ってしまた人など、ハナシがなかなかリアルである。

主人公の環境。確かに今は就職自体が大変な時代である。しかも30近くで女性となると、手に職がないと社会からなめられる。大卒とはいえ女性・年齢だけで中途半端な厄介な存在でもあるのだ。

そんな主人公のやるせなさやがんばり、独白などが行間から窺われる。誰かも言っているが、この小説は現代版蟹工船でもある。だって、電車賃にいくらかかるか、それを計算して日常を生活している。でもこの主人公はそれを受け止めるでもないが、淡々と覚めた感覚で自分の人生を語っている。若い女性というくくりでなく、女性そのものを僕は見直しちゃったね。うん、男と女には本当は差はない。自活というものにも男女の区分はない。

そんな自然な作者の目線をさわやかに感じ取れる快作である。

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