さすがシュレンドルフだ。映画的な映像を構築しているが、もともとは二人の密室劇なのだろう、8割方将軍部屋での交渉劇である。
冒頭にワルシャワの街が焼け野原になってしまう映像が挿入される。だいたい話の内容を分かっている観客はパリももしかしてこうなっていたのか、と熱いため息を漏らす。
もう狂人としか思いようのないヒットラーからパリ爆破計画を命ぜられる将軍の話である。そういう時でもよく理性が保たれていたなあというのがまず僕の実感だ。
家族の命を犠牲にしてまで住んだことのない街の破壊をとどめる理由もない、と一瞬将軍は考える。それを今までの外交経験で阻止しようとする外交官。どう考えても不利は否めない外交官。
パリはその後どうなったのか分かっていても、映像を見ている僕たちはハラハラのし通しだ。そこは名匠シュレンドルフ、だてに年は取っていない。重く鋭い人間劇を80分ほどで豊穣させる。
ラスト、でも、その外交官がドゴールの横に立つ働きをした、と同志から称賛される。外交官はそんなつもりでは、、と少し微笑む。一方責められ地獄の苦しみを味わった将軍はその時拿捕されていた、、。彼は自決まで考えていた。
歴史ってそんなものだろう。
パリがもし燃えていたら、ルーブルの所蔵品もほとんど僕たちの目の前にない。それだけでも重い。そして日本で、奈良、京都が同じく爆撃にさらされていたなら、今の日本は一体全体存在していたかどうか、、。
人間の叡智というものを深く考えるとともに、文化のあり方にまで考えさせられる秀作である。80分は短くとも実際はもっと長く感じられる作品であった。
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