いつもおなじみ、すれ違い、勘違いが巻き起こす人情劇、と言えばそれっきりだが、岡部の作品にはどこか昭和を想うノスタルジーが感じられます。向田邦子が昭和を思う気持ちにもダブってくる。それははっこきなべだったり、家族への並々ならぬ思いだったり、そして小道具の段ボール箱に至るまで満載であります。
特にみんながいつも思っているのにふと忘れている家族のつながりを強烈に感じてしまうのが岡部の人情劇の特徴である。言葉がど大阪弁であることが魅力を増大させていることは間違いない。
多少よしもとに近いところはあっても基本的には現代演劇に根ざしていることが岡部の強みであろう。
さて、今回は少し色が違うかなあと思っていた小川菜摘さんを客演に迎えての新作。小川さんも劇団のみんなもすーっと溶け込んでいた。さすが名演出家岡部。かなり練習したのだろう、その成果は俳優のセリフ回しに現れていた。
けれど、家を出るということをそれほど深刻にマイナスイメージに捉えていない僕にはちょっとこのテーマはイマイチ入りにくいところもある。
でもふとした家族のつながりをこれほど丹念にテーマづくりに設える作家も珍しく、いよいよ次作に期待する気持ちは今から高まっている。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます