原作はもう随分前に読んだが、伊坂に失礼だが、ほとんど忘れている。面白かっただけは鮮烈に覚えている、なんて言うのも気恥ずかしい。監督が瀧本であることを確認し、いざ映画館へ。これは拾い物。映画料金決して高くはないぜ。
原作で高評価イメージだった菜々緒の役どころが、多少それほどでもなかったのが少々残念だが、例の殺し屋連中、すなわち自殺屋鯨、ナイフ師蝉、押し屋が映像でも魅力たっぷりで、これは久しぶりに(大作という触れ込みの)邦画で喜びにむせぶところとなる。
なかでも浅野忠信は儲け役で、死に魅せられてゆく殺し屋を熱演(彼独特のさらりとした芸風がなかなか魅力的だった)。僕は初めて見る蝉役の山田涼介、彼も何が何だか分からないがむしゃらな魅力を放っている。彼の内面は多少不明瞭だったが、、。
ただ相棒という触れ込みの村上淳との愛憎がどうも希薄。どうも二人の関係が最後まで曖昧というべきか。あれじゃ、村上が少々気の毒。この映画での二人は重要な位置を占めているはずだ。
押し屋の吉岡秀隆はかなりこの作品ではキモイ。風貌からしてむんむん異臭を呈している。今回はあまりセリフもなかったから余計なんだけど、意外と彼の芸域が広がった感もする。
あ、そうだ、主役の生田斗真に言及していなかった。うん、どうもこの役は廻りが強烈すぎて、市井の人間である彼は目立たない。それは当然である。それでいいのだ。けれどあのラストは涙なしには見られない。いい俳優になってきたように思う。
この作品、全体を通してダレルところがない。ラストまである意味一気だ。スピード感もある。俳優陣の演技も脇役も含めてみんな素晴らしい。スタッフ全員で作り上げた映画だということがわかる。秀作と言えるだろう。
瀧本は処女作「樹の海」から数作作ったが、やっと代表作を手にした感がする。伊坂の世界観も保っている。
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