ロアルド・ダールは、奇妙な味の短編小説で知られるイギリスの作家である。
久しぶりに彼の小説「あなたに似た人」を本棚から取り出して、少し驚いたことがある。それは
「えっ、訳者は田村隆一なのか」
ということだった。
あなたに似た人 ロアルド・ダール 田村隆一訳 ハヤカワ文庫
この本を買ったときは、田村隆一のことは何も知らなかったが、最近、ねじめ正一の「荒地の恋」を読んで知った。
「荒地の恋」は、二人の詩人、北村太郎と田村隆一のことを書いた本である。
一応小説であるが、実名で出てき、事実に即しているから、評伝といってもいいだろう。
北村と田村は中学のときからの詩仲間で、「荒地」という同人誌をやっている親友だった。
北村は新聞社の校閲係をしながら、幸せな家庭を持ち、詩作をやっていた。
ところが、定年間近の50代半ば、妻と子供を捨て、田村の妻の明子と一緒になる。
それが地獄の始まりで、まさに荒地の恋だった。
北村の妻の治子は、何の落ち度もないのに突然夫に捨てられ、深く傷つき精神的におかしくなる。
明子と一緒になった北村は職を失い、経済的に困窮していく。
田村と明子も相当変わった人物で、普通の夫婦とは言い難いところがある。
田村は酒と女に溺れ、結婚と離婚を繰り返し、明子は田村の4番目の妻だった。
明子は有名彫刻家の娘で、わがままで感受性が強く、精神的に病んでいく。
妻を寝取られた田村と北村の関係は、決定的に壊れそうなものだが、田村は酔っ払っては北村に電話をかけて会いたがる。
やがて北村は明子と別れ、詩の朗読会で知り合った阿子という若い女性と関係を持つ。
なんとも異様な物語が展開されるが、単なる不倫小説、スキャンダルではなく、ひとつの詩論、芸術論となっているのは、著者のねじめ正一が詩人でもあるからだろう。
北村が、どこか魔性の匂いを持つ明子に惹かれたのは、芸術家としての最後のあがきだったのかもしれない。
北村も田村もどうしようもない男として描かれるが、詩の世界では有名な人のようで、多くの詩と翻訳を残している。
結局、著者が言いたかったのは
「ぬくぬくした環境の中では、人の魂に届くような詩は生まれない」
ということだったのだろうか。
石田純一さんが言ったからいろいろ取沙汰されたけど
昔の作家も行ってますよね。
諧調は偽りなり とか・・
ドロドロしたものの中から生まれる。
寂聴さんは今でも行ってらっしゃいますね。
>北村太郎と田村隆一
恥ずかしながらお名前も知りませんでしたが
なんだか読んでみたくなりました。
私は今日・・・35年位前に読んだ本の モデルさんに
偶然会う機会がありました。
これも小説ではなく・・・
ブログに書きますから読んでくださいね。
石田純一さん、そんなことを言って、世間を騒がせましたね。
寂聴さんも、壮絶な人生を歩んでいますね。
子供を捨てたりとか・・・
その中から、彼女の文学が生まれたんでしょうね。
私など、到底作家になどなれません。
>名前も知りませんでしたが
ほとんどの人はそうだと思います。
私も、この本で初めて知りました。
本のモデルさんに会った・・・
どんな出会いなのか、楽しみです。