「ななしいんく」の現状について:「産みの苦しみ」か「終わりの始まり」か

2023-04-21 12:45:00 | Vtuber関連

「あにまーれ」や「ハニーストラップ」などのグループを最近統合した「ななしいんく」だが、連続して様々な問題が生じているのでそのことについて触れておきたい。

 

今生じている主な現象としては、

1:中心的ライバーの一人である周防パトラのソロライブが、運営側の準備不足により返金対応するとまで言及

2:その状況を受け、別の所属ライバー瀬島るいが自身の誕生日記念ライブを延期かつそこまで活動休止の発表

3:さらに先日、別の所属ライバーの不磨わっとが4月末にて卒業の発表

という状況。1つならまだしても、これが同時に起こっている所に事態の深刻さが出ていると言えそうだ。

 

1・2と3はかなり性質が違うようで、根本的には「プロデュース力の不足」という点でつながっている。具体的に説明するとこういうことだ。1・2の詳細な要因は明らかにされていないが、実は以前にも、ライブ告知の不徹底からほとんどチケットが売れておらず、所属ライバーたちがそれをネタにしつつ、視聴者に周知し買ってもらうようお願いするという場面があった。

 

要するに、今回の準備不徹底は、ひとりグループ統合による多忙の中で生じたものとは言い難い、ということである(強いて言えば、元々存在していた運営力の低さが、グループ統合・新人3名デビュー・新規音楽ユニットの結成といった新しい取り組みでリソースが割かれたことで、より顕在化したと言うべきか)。

 

そして3は、すでに解散した「ブイアパ」の運営方針・目標が曖昧であったところに、盟友の小森めとが2月に「ぶいすぽっ」へ移籍したことが決定打となったものと予測される。不麿わっといわく、卒業は2021年から考えていたらしいが、これは小森めとが「ブイアパには目標とかなく各々が好きなようにやるんだよ」という趣旨のことを言われ落胆したのが2021年のことだったと発言しているのを思い出させる(ブイアパはゲーム配信を中心としたグループという売り出しだったので、後に小森めとが移籍する「ぶいすぽっ」のようにその方針を活かして活動を広げていくという戦略は描けたはずである。しかし結論は、良く言えば放任、悪く言えば方針の不在というものだったわけだ)。

 

もちろん、不磨わっとが引退を考え始めたのが全く同じ要因・タイミングかはわからないが、目標の不明瞭さが活動へのこだわりにとってマイナスに働いたことは想像に難くない(2020年におけるコロナ禍の始まりと「ステイホーム」による需要でVtuberが大きく伸びたタイミングであり、コロナ禍が続く2021年にそれを背景に今後どのような戦略を練っていくのかは意識が高いライバーであればあるほど意識していたものと思われる)。そのような意味において、これも「プロデュース力の低さ」が要因の一つになっていると評価できるのではないだろうか(ちなみに小森めとの移籍は年明けからあったのに、何で不磨わっとの卒業発表は4月なのかという話だが、2月頃に引っ越しもしていたので、そこで新しい活動に向けた準備をしながら運営はグループ統合などで大わらわだったので、両者のタイミングが合ったのが4月ということではなかったかと予想される)。

 

ただ、1・2と性質が違うのは、不磨わっとの引退については、本人が「不麿わっとではやれないことをやりたい」「前向きな話」と言ってもいるように、ポジティブで合理的な選択だと考えられる点だ。少なくとも自分がそう判断する理由は、彼女がRPをしようとして上手くいかない場面を何度となく目にしてきたからである(ちなみにRPの名手はVtuberで言うと「でびでび・でびる」「バーチャルゴリラ」「兎鞠まり」などを挙げることができる。現実世界ならデーモン小暮がわかりやすいだろう)。最も典型的なのは家族についての話で、たとえばコラボ相手から家族の話を振られた時、「アンドロイドとして生まれたからそういうのはない」という趣旨の発言をして「えっ?」という相手が戸惑うような反応をされる場面が何度かあった(コラボ相手も「あ、これ触れてほしくないって意味なのかな?」と気を遣ったのかもしれない)。もちろん、これは「設定上」の発言としては正しい。しかし、その設定が活かせているかはまた別で、むしろ足枷にしかなっていないという印象だった(注)。

 

さらに言えば、不麿わっと自体があまりキャラクターを演じている感じではなく、ふわふわした喋り含め「割と素のままっぽい」のが逆に他にはない魅力だったのだが、これなら不麿わっとという設定(この場合は「制約」)を離れた方が自分のやりたいことができる、と彼女自身が思うのは不思議なことではない(不磨わっとの慕われる人柄は因幡はねるを始め多くの人から定評があるし、そこにゲームスキルの他、K-POP好きなど他とつながる様々なフックも持ち合わせているので、「配信活動」に限定しても色々な可能性を持っていそうである)。そのような意味で、不磨わっとの卒業は、確かに運営のプロデュース力の不足という面は否めないが、彼女にとってもその方がより明るい未来が開けているという意味でポジティブなものだと評価できるのではないだろうか。

 

以上、ななしいんくに4月現在起こっている問題について3つ取り上げた(それでも不満が燎原の炎のようには広がっていないのは、運営が元々メンタルケアなどでライバー側に寄り添う姿勢を以前から見せていたのと、またこのタイミングで運営をやたら批判しても自分の足元に穴を掘ることにしかならないためだろう。その意味ではジャニー喜多川の性暴力報道と所属タレントの反応を想起させる部分もある)。

 

これが新しい可能性への「産みの苦しみ」となるか、あるいは立て直し失敗という意味で「終わりの始まり」となるかはまだわからないが、しばし注視していくこととしたい。

 

 

(注)

Vtuberは単に「キャラクターを演じる(別のキャラになりきる)」という効果だけを持つのではない。例えば、不磨わっとと同じ元ブイアパ所属の杏戸ゆげは、自分が今のビジュアルを与えられた理由と効果について、「私は口調がきついから、これで大人びたビジュアルだったらそれが鼻についていたかもしれないけど、こういう見た目だったら『ク〇ガキが何か偉そうに言ってるw』としてネタで許されてるw」という趣旨の発言をコラボでしている

 

こういうメタな発言をしても違和感がないあたり、頭の回転が速く辛辣な杏戸ゆげのキャラゆえとも言えるが、そういう風に自己の性質に上手くブーストをかける形でガワが機能しないなら(機能させないなら)、そのメリットは顔出ししない程度にしかならないのではないだろうか。

 

ちなみにここで杏戸ゆげが言っていることは、前に書いた「Neuro-samaのビジュアルが幼い少女でなかったら、その発言はinnocenceよりinsanityの印象が強くなり、大きな反感を生んだ可能性が高い」という話ともつながる。


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