鬼束直はキケンだ

2011-03-17 19:01:41 | 不毛漫画

前に何でもイケる=オールレンジグリーンの状態になりつつあると話したが、そんな俺がロリもイケるのは言うまでもない。
さて、ロリ漫画で質が高いものと言えばEB110SSオオカミうお朝木貴行東山翔せいほうけい瑞井鹿央などを取り上げることができるが、中でも鬼束直は極めて完成度の高い漫画家の一人である。三冊目の単行本“Lovable”で絵柄や話の展開などほぼ完成されている感はあったが、最新単行本「ポルノグラフィティ」はそれを踏まえた上でさらに質を高めた出色の出来になっている。「愛だけじゃ生きていけないの」みたいに、金が無くなって兄相手に売春をかます少女(こう表現すると原作のイメージとだいぶ違うナw)をネタテイストで描いた話もあるが、この作家は割と甘々いちゃいちゃ路線を基本としていたように思う。しかし『ポルノグラフィティ』では・・・ってアレ?何かまた作品分析みてーな方向にイッてないか?どうもPCだと長文書けるだけにすぐ連鎖反応が起きるんだよな。じゃあここは読者に選んでもらいましょう(ちなみに以下で掲載する画像の著作権は茜新社に属します)。

・作品分析なんて恥垢以下だ。重要なのは直観と萌えだろ、というアナタ→コースAへ

・萌えなんてヌルいこと言ってんじゃねー。物語の構造にこそ目を向けよ、というアナタ→コースBへ

・ボク知らえも~ん→アリヴェデルチ!


【コースA】
「地味時々エロカワイイ」は鬼束キャラの特徴だと思うが、『ポルノグラフィティ』でも「好きになったらいいじゃない」の京子、“girls collection”のちあき、“close to you”の舞衣などがその部類に入る(まあ地味っつーより「どこにでもいそう」の方が正確か)。ただ、個人的には(おそらく意図的とはいえ)ちあきが典型的な造詣のため一番簡単にスルーできたのに対し、京子は大人っぽさと少女っぽさの間にいる感じ(どこをそう感じるかは不明)&吊り目好きからゾクゾクするほどツボにはまった。また舞衣は「地味目な糸目少女」という謎設定のキャラだが(FFTのバルマウフラかよ!とマニアック突っ込みをしてみる)、拗ねてるシーンは危うくタマ持っていかれるとこでしたwしかしそういうのだったら、「エロカワイイ」とか「萌え」カテゴリーの範囲内であって、今までの鬼束がいくらでも描いてきたものだし、また他に体現できる作家はいくらでもいる(まあ安パイだしね)。『ポルノグラフィティ』で特徴的なのは、「アイワナビ―Princess's Pet」の、「Papilliones」のみずはに見られるような妖艶さだ。これはまあ「女の側がナニの時も含めて主導権を握っているから」という身も蓋もない理由が多分にあるが、これまでの鬼束の作品だと「愛だけ~」のように女がリードしていても結局ナニの時は男が主導権を握るという展開だったので、そういう意味で新しい特徴と言える。まあそういう展開自体は他の作家も含めれば少なくないんだが、「萌え絵」でそれをやってもなんかかわいらしいのに対し、鬼束直はなまじっか(?)絵の完成度が高いため妖艶さが感じられるレベルになっているという次第。帯の謳い文句じゃないが、「萌え」も「エロカワイイ」も供給過剰になっておるので、今後はこの方向を開拓していってほしいものだ。

 

【コースB】
最初「ドライアウト」を見た時、何だかハッチっぽいなと思いすぐに訂正した。確かにハッチの作品は近親相姦系が多いが、それは激しい感情に突き動かされているのを特徴としている。たとえば、妹とセックスする兄、兄との関係が切れた後に父と関係し、それを引き裂く母、という具合に妹を巡る家族の愛憎話がある(母の行動は「道徳」や「倫理」ではなく嫉妬に基づいている)。また娘主観で、妻を喪って打ちひしがれた父親と関係を持ち、その父親が痴呆になってしまった後も寄り添い続ける話などもある。これらと、ストレス解消の一環としてAVを見ながら娘を凌辱する「ドライアウト」の父親は全く対照的である。彼にとって娘はあまりに感情が激しすぎて対し方の定めがたい存在などではなく、むしろ「しゃべるオナホール」程度のものにすぎないのだ(その意味で「ドライアウト」というのは、その状況に感情が磨滅していく主人公の精神状態も含め、極めて的確な題名と言える)。その父親を止めるでもなく、テレビだかビデオのリモコンを淡々と渡す母親。事が終わった後、娘は母親に対し侮蔑の言葉を投げつける。「あんたの穴ってさ、なんのためにあいてんの?」と。そして激昂した母親は娘を平手打ちに・・・とかまあそんな話。

娘は最初のうち抵抗したことが暗示されているが、母親も最初は何らかの反応を示したのだろうか?そのあたりは描かれておらず、詳しい背景は不明である。それを前提にした上で言うなら、この家族、正確には母親がなぜそこまでして家族の形を続けているのかが疑問だ(この唾棄すべき父親に関しては多くを語る必要もないだろう。飼料を食らって生きる家畜に人間の言葉が意味を持つとは思えないからだ)。家の間取りや家具などを見る限り金はなさそうであり、母親が父親を金づるとして利用しているとも考えにくい。それにまあ金があったらギャンブルで負けてイラっとしてても外で女遊びでもして解消して、わざわざ家でAV見ながら娘を犯すという内向きの行為には走らないと思われる。むしろこの雰囲気だと逆で、女の側が金を毟られているんじゃないか?だとしたら、この母親は男との関係を維持するためにわざと父親の娘に対する行為を止めないのだと考えられる。でまあこの推測が正しいのなら、「あんたの穴って~」とか言われても文句言えないわな。なぜって、この女は自分の娘の身体を担保にして男を繋ぎとめようとしているのだから(後ろ暗い気持があろうが、結局やってるのはそういうことだ)。もし家族ゲームを維持しようと躍起になっているのなら、「人を死に追いやるくらいだったらそんなもん解体しちまえよ」とも言えるし、「奇妙なサーカス」やら「紀子の食卓」を持ち出すこともできるけど、まあ問題は別の方向でね・・・という具合に、ベタに見ていくと考えられる。まあネタというかメタでいくと、「ああそういうシチュエーションなのかぁ」で終わりだがw

他についても触れておくと、“Scar tissue”はちょっと古臭い&それがベタに描かれているので少しイタ~い感じの話。むしろこれが「援交少女と相手の演技だった」くらいのヒネりで丁度いいんじゃないか。それで安心するヤツもいるやろーし、イラっとするヤツもいるやろーし。ただまあそういうのやると読者がバカにされてると思う危険性はある(まあ単なる「夢オチ」と同列に考えるくらいに単純思考な受け手ばかりだと逆にやりやすいかもしらん)。自分が掌の上の猿に過ぎないっていう自覚のない奴が増えると、人に突っ込みばかりして自分の足元が掘り崩されるのは嫌いな臆病でプライドの高い偏狭な反応が増えて大変なことであるよ(もっとも、不快なものへの耐性が極度に落ちた存在として、もっと一般化すべきかもしれんが)。“Fiction S”はライト変態(何じゃそりゃw)みたいな話だが、これは膨らませると結構おもしろいんじゃないかなと勝手に思った。

こんな具合で色々なテイストの作品が収録されているので、さっきも挙げた“girls collection”のような典型性がむしろかえって異質に見えるほどだ。まあどこまで狙っているのかは不明だが、一つの本にまとまったことによって、様々な方向へ挑戦しようとする作者の試みがよりわかりやすくなっていると言えるだろう。

 

とまあ色々語ることのつきない鬼束直、あるいは『ポルノグラフィティ』でありますが、「エロカワイイ」、「萌え」、「甘々いちゃいちゃ」路線はあえて言えば楽なものであるので、せかっくここまで話の描き方もエロの質も向上してきたことだし、鬼束直にはこれからも様々な方向へ挑戦していってほしいと思う。


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