森の案内人 田所清

自然観察「独り言」

フッキソウ(ツゲ科) の実

2006年12月17日 | 自然観察日記
 秋に白い丸い実をつける。遅くまで残っていたからか、中央が裂けてあたかも耳を立てた猫の輪郭に似ている。初冬に見つけた森の妖精のようだ。
 「富貴草」と書いてなかなか縁起のいい草である。いや、「草」ではない。扱いは「常緑低小木」で樹木の扱いなのである。肥大成長するようなものでもないし、全体に柔らかい感じがするから、ストンとこない。
 越後の山野にも生育し山奥のブナの林の下草にも見られる。日陰に強いから、庭や公園のグランドカバーの素材としても利用されごく身近でも見られるから親しみやすいものである。別名「吉祥草」で、1年を通じて茂るので、繁栄を祝う意味を表しているという。

これは何科?

2006年12月16日 | 自然観察日記
 花は多種多様。しかし、まったく異なる系統でも一見同じ仲間のように見えるものがある。この種と次種の違いが判ればそれなりの実力をお持ちの方ということになろうか。

ナラ枯れ

2006年12月15日 | 風景
 下越の里山が荒れている。旧三川村中ノ沢森林公園を訪れたとき、大きなコナラやミズナラの大木が枯れ果てている現状に出くわしたからだ。今まさに枯死した感じで、葉は赤茶色になり根元からは黄色い粉が噴出している。
 ナラ枯れは以前から報告されていて、私も時折コナラの枯死したもを観察していた。しかし、規模はそれほど大きなものでなく、単発的な感じであった。カシノナガキクイムシの穿孔による被害とそれによってもたらされる菌の仕業だといわれているが、その予防法は確立していない。かつての、日本中を襲った松枯れと同じようにナラ枯れは進行しているというのが近況である。
 見方を変えれば、人の関わり方が異なってきたのが原因という。かつてナラ属は主要な薪炭材として20~30年で伐採され常に新しい森として更新されてきた。その際、病気の樹も除かれ明るく若々しい森として維持管理されたのである。
 しかし、今は放置されさまざまな種の植物が入り込んできている。動物相を含めて新たな競争が起こっていると考えるのである。人が関わるのをやめた以上、今のナラ枯れは当然の結果ということになる。新たな安定した相になるまで植物界の栄枯盛衰は続くもだろう。

フユノハナワラビ(ハナワラビ科)

2006年12月14日 | 自然観察日記
 シダ植物である。栄養葉は夏に枯れ秋に新葉をだし、冬場胞子葉を伸ばす。草姿が鉢植えで楽しむにはちょうどいいものだから「とこわらび」などといって飾られている方も多い。
 やや放置気味の公園の芝地に大群落が出来ていてちょと感激した。見つけられれば掘り取られてしまうのだが、幸いというか荒れた芝地に溶け込んでほとんど目立たない。しばらくはこのまま群落が維持されることだろう。私だけの秘密の場所になった。
 しかし、シダ植物はかなり苦手だからよく判らない点もおおいのだが、このハナワラビはいつも見かけているものに比べ小型である。栄養の問題なのか別種なのか・・。


ヒペリカム・ヒデコート(オトギリソウ科)

2006年12月13日 | 自然観察日記
 「びょうやなぎ」といわれる園芸用に移入されたもの。公園や街路樹の林床を飾るために植えられろことも多くなった。
 半落葉小低木で株立ち状に良く分枝し、樹高は0.5~1.5mになり5~7月に枝の先端に鮮黄色の花をつけ秋には葉色が赤変する。成長が早く萌芽力があるので比較的栽培し易く、挿し木や株分けで増やし移植も容易におこなえる。これは街路樹脇にあったものを一枝頂いて挿し木で育てて3年目になったもの。沢山の花をつけて庭の一隅を彩っている。


テイオウカイザイク(キク科)

2006年12月12日 | 自然観察日記
 ヘリクサムという名で知られているかもしれない。我が家のお隣の畑に栽培されていたものを秋に撮影したもの。テイオウカイザイクは「帝王貝細工」と書くのだそうで「貝細工」は花の雰囲気でなるほどという気もするが、「帝王」は豪華さを現したものだろうか。とにかく造花みたいな花でこの状態ですでにドライフラワーのようである。原産はオーストラリアやアフリカの乾燥地帯だから、極端に水分を節約した進化を遂げた一つの形なのだろう。水分条件の恵まれた日本の畑でも良く育っていて、住み心地は悪くなさそうである。しかし、瑞々しさは感じられない。
 花びらに見えるものは花弁でなく総苞片といわれるもの。花は中央部にある黄色のものだが花弁などを確認するために広げて見ることはしなかった。

裸地の風景

2006年12月11日 | 風景
 秋、山道を歩いての気づきである。公園の散策道として切り開かれた道で間もない場所である。今までの植生を破壊したところを裸地というが、ここは樹木を伐採しただけでなく斜面を削り土壌の剥ぎ取りを行い完全な裸地化したところ。しかし、もうスギの実生が芽生え脇にはヤマモミジの種子が飛散してきている。周囲の水分条件も悪くなさそうだから、やがてこの実も発芽し根を下ろすかもしれない。
 日本はすばらしい国だと思う。土中に埋まっている種子を埋土種子というがそれをも取り除いてさえ、周囲からの種子の飛散があって、裸地になっても短期間で緑に覆われる国である。ただ、破壊した場所の緑が回復しても本来の自然に戻ることはまず無いであろう。人との関わり方で森も姿を変えてくるからである。
 ともあれ、立派な森をつくり育てることが地味ながらも環境を守る手近な方法だろうから、出来る限り無為な破壊をしないでほしいものである。道路やダムなど作ることを叫ぶ人々がいるが、行政に携わる人ほど自然の生態について学んで欲しいものだと思っている。

タコノアシ(ユキノシタ科)

2006年12月10日 | 自然観察日記
 名前も面白いが奇妙な草姿の植物だ。 花序の枝に多数の花が並んでいる様子が、「吸盤の付いた蛸の足」のように見えることからつけられたのだろう。それに、秋になると全身が真っ赤に紅葉するので、まさに「茹(ゆ)で蛸」状態となり言いえて妙である。いい写真を消してしまって少々残念であるが、来年取れたらまた載せることにして今回はこれでご容赦を。
 それより、この種も絶滅危惧種で保護の必要性があるものである。泥湿地、沼、川原などに生育しているのだが、洪水対策、灌漑など河川の改修が進んでいるため彼らが成育する場所が急速に失われてしまっているのが現状である。
 近年報告されていることに、生育環境の似たセイタカアワダチソウとの競合で負けて減少しているというのがある。特定の保護区を作って積極的な対策でもしないと消えてしまうことは間違いないだろう。

アメリカセンダングサ(キク科)

2006年12月09日 | 自然観察日記
 「ひっつき虫」とか「バカ」とかいっている極身近にある野草。もう越後では茎が朽ち先日の雪で倒れてしまい、種子が固まりになって「ひっつこう」としているものは無くなったかもしれない。
 厄介者扱いされることが多いセンダングサでも、カメラを向けてみればなかなか優れた造詣であることがわかる。彼らは彼らなりに知恵を出して生きているということであろう。アウトドアが出来ないこの時期、過去の写真を一枚一枚遡っていくと、そのときの情景が思い出されたりして、早く活躍できる季節が来ることが待ち遠しくなってきた。
 ところで、なぜ「バカ」などという名前がついたのだろうか。越後もこの辺りだけなのかもしれない。

オモダカ(オモダカ科)

2006年12月08日 | 自然観察日記
 お正月の御節の定番にクワイがある。量は少ないが毎年口にしないと新年を迎えられない思いがある。毎日の通勤の途中にクワイ畑(水田9があって、今は地上部が枯れ収穫を待つばかりである。まもなくその作業が始まるのであろうが、そのころから年末の慌しさが架橋に入るのである。
 そのクワイと同じ仲間にオモダカがある。クワイは中国原産の有用植物であるがオモダカは水田雑草として厄介者扱いされるもので、かなり雰囲気が違う。地下茎は芋状に肥大はしないが、花は結構可愛いし葉はやじり型になって特徴的な湿生植物だ。
 そんな厄介者扱いされるオモダカでさえ今は減った。私の家の周りの水田は排水設備が整ってきて乾いた状態が長く続く。かってはメダカが住みオモダカが生えていた小川には水を張る時期以外は水が無い。ホタルやトノサマガエルがいなくなった理由もここにある。

サワギキョウ(キキョウ科)

2006年12月07日 | 自然観察日記
 この花も紹介し忘れの一つ。湿地に生えるサワギキョウである。庭の雑草であるミゾカクシと同属。大きさや色合いはまったく異なるが、よく花の形を見るとそっくりで納得する。よくよく見ると鳥が羽を広げているようにも見えてその造詣は見事である。
 私はサワギキョウを見るたびに尾瀬沼のほとりに大群落を作っている光景を思い出す。長蔵小屋に近い大江川湿原が始まる水際に、遠目からしか見れないが青い絨毯が敷き詰められ水面との対比が美しかった。
 やや深い山地や亜高山の湿地に生えている。長岡の周囲にもかっては結構生育いていたようであるが、私は自然状態では見たことが無い。どこかの沢にひっそりと残っていることを期待したい。

シロネ(シソ科)

2006年12月06日 | 自然観察日記
 地下茎や根が白いから「白根」。湿地や水辺に生えている。夏から秋に白い小さな花を咲かせる。目立つものではないが結構普通にあって、いくつかの近似種がある。
 今は合併して新潟市になったが、旧白根市はかってこのシロネが生い茂る湿地帯であったのだろう。地名と植物名が絡んでいそうな場所が沢山ある。そんなことから、昔の景観を推測するのも面白い。

ミズアオイ(ミズアオイ科)

2006年12月05日 | 自然観察日記
 今までの写真を整理していると取り上げたいものが何枚か出てくる。今回のミズアオイもそのうちの一つでタイミングを逸失してしまったものである。9月に雪国植物園で撮影したもの。
 金魚屋で見かけるホテイアオイと同類であるが、こちらは絶滅危急種として位置づけられていて保護の必要性が声高に叫ばれているものである。以前は湿地や池に大群落が見られたそうで美しい景観を作っていたという。確かに、植物園で見た花の色は澄んだ青い色、これが一面に広がる景観は想像しただけでも圧巻である。
 日本の湿地を取り巻く環境がが急速に変化していることが問題で、特に水質の悪化がとりだたされている。流れ込む水質の管理が大切なのだが、このミズアオイは少し前までは水田雑草であったというから、人とのかかわりがある程度ないと生きていけない種である。
 「里山植物」という言葉はあるが、これには少々そぐわない感じだから「人里植物」とでも言っておいたほうが良いのだろうか。

ハマゴウ(クマツヅラ科)の実

2006年12月04日 | 自然観察日記
 もう葉が落ちたがハマゴウの実が寒風に揺れている。もともと海浜植物で、肥えた粘土質の土壌には適応しないのだが、今年もいい花を見せてくれた(以前に紹介した)。しかし、今は実がその存在を思い出させてくれるにすぎない。
 写真は先月の中ごろの状態(花は9月)。落葉低木。漢方にも使われる薬草。