山里に生きる道草日記

過密な「まち」から過疎の村に不時着し、そのまま住み込んでしまった、たそがれ武兵衛と好女・皇女!?和宮様とのあたふた日記

『銀の匙』にみなぎる青春の葛藤

2016-01-31 20:39:58 | 読書
 『銀の匙』と聞いて思い浮かんだのが、中勘助の代表小説『銀の匙』のこと。
 中身はすっかり忘れたが、某有名進学塾の国語の先生が1年間かけてこれを教材にしたという。

 さて、家から逃げ出すように大蝦夷農業高校(エゾノー)に入学した主人公「八軒勇吾」に、校長は語る。
 ●「逃げたことを卑下しないで それをプラスに変えてこそ、逃げた甲斐があるというものです。」(4巻)

                            
 そこには、素敵な人生の先輩がいる。
 たとえば獣医の先生が語る。
  ●「どんなことでもね、叶うにしろ 叶わないにしろ…
 夢を持つということは、同時に現実と闘うことになるのを 覚悟することだと思うよ。」(1巻)

 この言葉は、作者荒川弘の作画姿勢でもある。
  
                              
 巻末には次号の宣伝コピーが書かれているが、その文章が優れている。                         
 ●「人はどこから来て、どこへ行くのか… 八軒は自分のルーツに向き合う。
 逃げたことは間違いじゃない。
 人生の道順は、一方通行なんかじゃない。
 それを教えてもらったから、変われたんだ。
 今の自分は、嫌いじゃない。(8巻)
       
         
 ●「夢が散った。
 近くで見ていたからわかる。
 あいつの悔しさも、あいつの虚しさも…
 自分の出る幕じゃないことは 重々承知。
 それでもここは引けないんだ。
 少年の中に宿る決意…
 そしてまた季節はめぐる。
 北海道の冬は、どこよりも厳しい…」(7巻)

                                
 ●「誰よりも頑張った。
 それでも報われないこともある。
 理不尽を受け入れなければいけないこともある。
 でも、きっと誰かが見てくれている。
 この世の中、けっこう捨てたもんじゃない。
 八軒には、そんな誰かが エゾノーにいる。」(6巻)

 マンガそのものは面白おかしく描かれているが、根底には以上のような思い入れが貫通している。
 


 

コメント
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