静岡県下で二番目に古いと言われる社殿がある「八幡神社」が突然現れた。急坂を上り詰めると威風堂々とした風格のある社殿だった。1552年の棟札があるというから、室町時代の遺構を継承しているという。信州と遠州を結ぶ交易の「塩の道」であり、秋葉山に向かう信仰の「秋葉街道」でもあった。
鬼瓦のてっぺんには、お経の巻物3巻が乗せられており、その下に「綾筋」という2本の「へ」の字直線があるが、その意味についての資料は見当たらない。綾筋の下には「蓮の花」が線で表現され、中央に八幡の「巴」紋がある。左右の両脇は雨が侵入しやすい場所なので「雲」を飾り、雨の侵入を防ぐ役割がある。「雲」は建物が火事になったとき天から雨雲を呼びその雨で火を消すという意味があるという。
社殿の彫り物は見事な作品になっている。デザインの「松」と「鷹」は掛軸や襖にもみられるが、「松」は生命力・不老長寿、「鷹」は力強さを表す。それは戦国時代から江戸時代にかけての武士の祈願に背景があるようだ。家康軍が武田側の犬居城を攻める前にこの神社で「武運長久」を祈願している。
また、「鳩」は、西洋では平和のシンボルだが、日本ではなんと軍神の八幡神の「神使」なのだ。つまり戦争に勝つための象徴だったのだ。こうしたちょっとした飾りから時代が見えてくる。戦前の神社が果たした役割を今日いまだ総括されていない。