昨日に続き今度は森町・蔵雲院の鬼瓦に注目。境内の隅に置いてあった由緒ありそうな瓦はシンプルな家紋瓦だった。「丸に一引(ヒトツヒキ)」という家紋で新田氏が有名。「一」は龍の昇天を現す形で、「引両(竜)」(ヒキリョウ)型というらしい。そこに雲紋をつけている。
本殿の屋根には3本の経巻を載せた「雲水型切据鬼」と言われる鬼瓦が鎮座していた。「頭」の中央に家紋があり、左右の「胴」には雲紋があるが、「足」がないので「切据」という。その代りに、波をあしらった「エブリ台」という立浪模様の瓦を置いている。なぜ「エブリ台」というのかはわからない。
経巻の先端にもいろいろ種類があって、これは「蛇の目」模様がある「巴」の巻物ということだ。これらの鬼瓦を「獅子口」と呼んでいる。同じ鬼瓦でも微妙に違うのが見どころの一つだが、それを体系的に分類している職人・研究者は皆無に等しい。むしろ、人によって呼称が違うのでわからないことが多い。(図は石川商店HPから)
他の堂宇には、鬼面文(キメンモン)と蕨手のある鬼瓦があった。鼻汁のように見えるのはクモの巣だよ。顔つきはなかなか逞しくイケメンだ。この顔面にはオスメスがあるようだがうかつにも確認できなかった。
山門の屋根にも鬼面文の鬼瓦がこちらを睨んでいた。魔除け・厄除けの任務をきっちり遂行しているというわけだ。こちらの顔つきのほうが古代の鬼瓦に近い気がする。山々に囲まれた森町ではあるが、むかしから交通の要所にあり経済の流通をにない、「森の石松」が闊歩していただけに、派手な祭礼といい、文化財の豊富さといい、市町村の合併に動じない自立性を感じたひとときでもあった。