石碑調査(栃木県限定)と拓本等について(瀧澤龍雄)

石碑の調査(栃木県内限定)を拓本を採りながら行っています。所在地などの問い合わせは不可です。投稿は、実名でお願いします。

1月9日の石仏巡り

2006年01月10日 | Weblog
朝から乗り込んだ足利市福富町の遍照寺さん。そこには2基の宝塔型宝篋印塔があった。そしてその2基とも銘文が素晴らしい。特にその中の1基は、当栃木県で私は初見になる「宝篋印陀羅尼経」の出だしからが刻字されているすぐれもの。
このような塔の存在としては、千葉県習志野市の西光寺にあるのを西岡氏からその内容と共に教えていただいていたが、その出だしは「寶篋印陀羅尼經云如是我聞…」からだが、ここにあるのは「一切如來心秘密全身舎利寶篋印陀羅尼經曰如是我聞…」から始まるので、一枚上である。加えて、習志野市西光寺の紀年銘は文化12年に対し、こちらは明和5年とあるから、出現が47年ほど早い塔となっている。しかし残念なのは、その内容がどこまで続いているかでは、遍照寺の方は三分の一ほど西光寺に比べて短くなっている。まあ、それらは別にしても、これでようやく出だしからの銘文に出会えたと大喜びである。加えて、もう1基の方にはその基壇4面に寶篋印陀羅尼經に基づく願文が記されている。そのたった2基の銘文書き写しだけで、この遍照寺さんには3時間以上もへばりつくことになった。また、山門には文化14年銘の徳本上人の六字名号塔があったり、明和7年の銘の如意輪観音像が乗った台座には、素敵な宝珠模様が浮き彫りされているなど、嬉しさが次から次へとこみ上げてる、宝の山のお寺さんだった。
この遍照寺さんを調べ終えて辞した後は、もうこのまま帰路についても満足という心理状態だった。そんな気持ちで、遅くなった昼食を渡良瀬川の土手へ行ってのんびり食べる。
それにしても今日は、当地方にしては珍しく無風状態で申し分のない天候。赤城山方面も真っ白な山並みを見せている。そんな渡良瀬川の土手で休んでいると、この後は今日の”もうけもの”としての石仏巡りをしたくなって、前々から行きたかった堀込町の薬師さんを訪ねることにして車に乗り込む。そして来てみれば、そこは初詣の人々でひっきりなしに人々が行き交う賑やかなお寺さんだった。
早速、事務所を訪れて訪問の趣旨を述べてから石仏調査に入る。と、その時、突然に携帯電話が鳴る。一体誰からだろうと出ると、「もしも~し、今何処にいるの~」という、佐野市の高橋氏からだった。やはり、悪いことは(といっても、高橋氏と今日の石仏巡りは約束していなかったのだが)出来ないようだ。現在地を言うと、「それなら今からそちらに行く」と言う。新年早々、高橋氏と一緒に石仏巡りが出来るとは、これは今年一年も高橋氏にはお世話になりそうだ!。
そうそう、堀込薬師様(正式な名称は、真言宗豊山派・宝性寺)境内には、今日はもうイイヨ!というような気分の近世宝篋印塔がある。銘文を見ると、いたってありふれた物だけに、簡単に銘文を写すことが出来たのは幸いである。問題は、その隣にある単制石幢六地蔵である。見ると、銘文がかすかに読みとれる。逆さまになって水洗いしていると、そこに高橋氏が到着。新年の挨拶もそこそこに、早速銘文の確認を一緒に行い、元禄8年銘であることが判った。本当に今日は、こんな所で単制石幢六地蔵に出会えるとは!。正に正月から、コリャ~春から縁起がよい、と言った所か。その境内から表に出た所に、天和元年銘の青面金剛塔があるのを高橋氏が教えてくれる。行ってみると、丁度光線が悪くなった直後で、写真にならない。初めからここを見ていれば、良い写真が撮れたのに!、と少なからずガッカリ。
そしてその後は、高橋氏推薦の、龍善寺を訪ねたりして正月石仏巡りらしい行動を一緒に取る。最後は、崇請寺へ立ち寄って、夕日を浴びながら無縁墓地の縁へ腰掛けてよもや話。この寺へは以前に来ていたが、首の欠けた丸彫り立像の背中にある銘文が気になって書き写すことばかりに夢中になって、肝心の写真を取り忘れていたから来たのだが、家に帰って写真を見てみたら、やはり夕焼け写真で気に入らぬ出来である。
そんな、今日はいずれにしても思いがけない高橋氏との新年石仏巡りが出来た次第である。次回の高橋氏との石仏巡りは、岩舟町から藤岡町方面を訪ねたいものと思いつつ、佐野市から293号線への分かれ道まで一緒に行って、今日の石仏巡りを終えて帰路につく。
※7日の石仏巡りの調査原簿も整理していない内に、今日の内容濃い調査で、これから暫くは毎夜楽しく時間が過ごせそうである。そんな訳で新年の石仏巡り案内HPへの掲載は、大幅に遅れそうである。
そうそう、それと「みみだれ地蔵尊堂」で、地蔵尊の持つ錫杖に、五輪塔が刻まれている珍しいのを見てきました。これも、HPに掲載するときは珍しいのでお見せしようと思っています。そんなの、他にもあるのを知っている方がいましたらぜひご教示下さい。
それでは、また!