全国的に、庚申信仰が衰退した世にあって、今なお厳然と昔ながらな庚申信仰の行事として行われている「マルメ」についてのご紹介です。庚申信仰の「マルメ」行事?と言われても、庚申塔に興味がある程度の方には初めて聞く言葉かもしれませんが…。この、庚申信仰における「マルメ」とは、12年に一度巡ってくる「申年」に、その地区の庚申講(一般的には今までの庚申塔が建立されている地)で、無事に庚申信仰が12年間行われてきたことや、本来なら60年に一度の「カノエサル(庚申年)」に建立される石塔に代わって行われる民間行事である。これを「マルメ」と称して、60年に一度の「庚申年」には「本マルメ」として庚申石塔が建立されることが多い。つまり、今回の「マルメ」は12年に一度だから、5回を繰り返して「本マルメ」になる訳である。こんな庚申民間行事、今では日本全国的に見てもそうそうあるものではありません。それが当地では、その勢いは衰退したというものの、一つの行政区域内の更に細分されたの庚申講を続けている地区において、連綿と行われているのである。正直、日曜日に当地を訪れ、初めてその「マルメ」信仰が今なお継続されているのを目にして、思わず感嘆の声を発したものである。この庚申「マルメ」行事については、昨日のこのブログで紹介した拙著私家本にも紹介しているので、内容に興味のある方は参照してください。
下に、掲載した写真は、「申年」に祀られたマルメ札だから、平成では28年(2016)年の物です。全てが木材で出来ているので、4~5年もすればボロボロになって朽ちてしまいます。右側の自然石庚申塔の所に立てかかっているのがそうです。
これを、今度は拡大して掲載したのが下の写真です。梵字読みは、バーン・ウーン・タラーク・キリーク・アク・フーンです。
次は、この日月瑞雲の板の台木となっている、杉の枝に書かれている偈頌内容です。細い枝に書かれているのですが、その実物写真を細長くなりますが掲載しましょう。
如何ですか、恐らく庚申信仰に詳しい方でも、こうした「マルメ」の現物を見るのは初めてなのではないでしょうか。私は偶然にも、その前の12年前の「マルメ」も出会っているのですが、その時は地元の方も「もう、これが最後かもしれないね」と話していただけに、本当にそれが今も続けられているのに出会い、感動しました。もし、庚申信仰を少なくも10年以上真剣に調査している個人の方(中途半端な方や興味半分の方はご遠慮ください)で、興味を持たれました方はご連絡下さい。恐らく、次の申年(2028年)には、この信仰も消滅していることでしょうから、調査するなら今の内ですので。それと、今はバス停も無くなってしまった、周囲は山ばかりの田舎で行われているのと、その庚申塔のある場所を探し出すのは普通の方では無理でしょうから。いわゆる、当地の「庚申塚」の殆どは、山の中のその坪の庚申講に参加している方しかしらない所に祀られているのが多いのです。幸いにも、私は過去の調査で現地の方々に教えられてそれらの所在地を実際に調査しているので、すべての場所を知っています。今の、年老いた身には何とも嬉しい事です。(笑)
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